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 ベネチアで仮面をかぶった人が小舟に乗り、ローマの街角では仮装した子どもが色とりどりの紙くずをまき散らす――そんな謝肉祭(カーニバル)の騒ぎが終わると、イタリアなどカトリックの国では、復活祭(イースター)前の「四旬節」と呼ばれる節制の期間に入る。

 今でこそ厳格に守る人は少なくなったが、「灰の水曜日」と呼ばれる四旬節の初日(今年は3月6日)と、46日間に及ぶ期間中の毎金曜日は、肉食が禁止される。四旬節の間はごちそうやパーティーなどは避け、復活祭(今年は4月21日)に向けて心身を清め、悔い改めるのだという。

 とはいえ、美食の国イタリアで「神様に怒られない程度においしいものが食べたい」と思うのは、やむを得ないところか。四旬節の間も食べられるグルメがきちんと用意されている。その代表選手が魚のタラだ。ノルウェーやアイスランド産が多く、干したものや塩漬けにして売られている。

絶妙な塩抜きの加減は

 ローマ市民の台所、トリオンファーレ市場の一角にあるタラの専門店を訪ねると、一日中ホースから水を注がれている容器の中に、塩抜き中のタラの身がつかっていた。すでに塩抜きされたものが売られており、頼めば皮をむき、小骨を丁寧に取り除いてくれる。身の水を切ってからトマト煮込みにしたり、フライにしたりする。

 自宅でこの塩抜き作業をするのは少々、やっかいだ。店によると、1日3回、水を替えながら5日間かけて塩を抜くという。塩抜きが十分でないと塩辛くて食べられないし、逆に抜けすぎているとスカスカして味がなくなってしまう。節制とごちそうの間のバランスを取るのは、かくも難しい。

 それならと、伝統的なローマ料理店にタラ料理を食べに行くことにした。テベレ川沿いのユダヤ人地区にある「ジジェット」は、古代ローマ時代に魚市場があった場所だという。いまやすっかりローマ市民の「庶民の味」のタラだが、イタリアにもたらされたのは、ベネチアの貴族がノルウェーの干したタラを持ち込んだ15世紀だとされる。

節制の金曜日のごちそう

 ジジェットの店員ステファノ・マラビリアさん(43)にタラ料理があるか尋ねると、「金曜日だけはあるよ」。おお、やはり。カトリックの聖職者や信仰のあつい人には、金曜日に肉を食べない習慣がある。その代わりとして、タラを食べる伝統が続いている証拠だ。

 この日、店にあったタラ料理は、次の4種類。前菜にタラのカルパッチョ、タラのコロッケ、タラのフリット(天ぷらのような揚げ物)、メインにタラのトマト煮込み。これらが次々と運ばれてくるタラづくしの食卓は、まさにごちそうだ。

 タラのカルパッチョは、やや塩…

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