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 高校野球の選抜大会の開幕まで1カ月を切った。出場する龍谷大平安(下京区)と福知山成美(福知山市)はこの冬、グラウンド外でのトレーニングで筋力と精神力を磨いた。秋の大会より一回り大きくなった体で大舞台に挑む。

龍谷大平安 「根性坂」ダッシュ 粘り育てる

 龍谷大平安の練習場(伏見区)の入り口には、「根性坂」と呼ばれる約200メートルの坂がある。高低差30メートルほどの急勾配だ。練習後、全員がダッシュで駆け上がるトレーニング「坂ロング」で、冬場に足腰を鍛えるのが伝統だ。

 24日夕、坂道を上りきったところにある駐車場に選手が集まり、15人ほどずつの4班にわかれた。「行くぞー!」。水谷祥平主将がかけ声を出し、坂道をゆっくり下り始めた。下りきると、1班ずつ坂道を駆け上がった。

 そして再び下る。ほとんどが腰に手をあて、「はあ、はあ」と肩で息をしている。この日は上り下りを4本繰り返した。ラスト4本目は「さあ、行こう!」の声で励まし合った。冬なのに汗だく。「きつい」と声が漏れた。

 水谷主将は「脚力と根性とチームワークを鍛えるのが目的」と話す。このトレーニングは2015年12月に始めた。その年の秋の近畿大会の準決勝では、滋賀学園に1―8でコールド負け。精神面のもろさを克服するため、冬場の練習後の5往復を日課とした。

 駆け上がり1本の制限時間は、班ごとの足の速さに応じて45~48秒。オーバーする選手が1人でもいると、その班はもう1本追加となる。原田英彦監督(58)は「遅い選手がいればほかの選手が背中を押してやる。最終日には全員が『やり切った』と言って、泣いていた」と振り返る。

 チームワークと気持ちの強さが増し、16年の選抜大会では4強に食い込んだ。「坂道ダッシュで根性がついた」と評価し、原田監督が大会直後に「根性坂」と名づけた。坂の上り口に17年5月、「根性坂入口」と書いた石碑を建てた。

 現チームの坂ロングは週2、3回。野沢秀伍(しゅうご)投手は足腰が鍛えられ、投球時の体重移動がスムーズになった。「ダッシュの最後の1、2本を踏ん張る感覚は、試合終盤の八、九回と同じ。坂で鍛えた精神力と筋力が、ピンチでの粘りにつながるはず」と話す。(川村貴大)

福知山成美 ジムで個別筋トレ データ競う

 福知山成美は昨年11月から今月24日までの週2、3回、福知山市土のスポーツジム「アトラス」に通った。同校からは自転車で20分ほど。野手5班(各班10~11人)、投手2班(5~6人)にわかれ、時間帯をずらして筋肉を鍛えた。

 メニューはそれぞれの筋力に応じて違う。メニューを決めるジム代表の松嶋幸一さん(68)=舞鶴市=は、30代前半のとき全国クラスのボディービルダーだった。現在は府ボディビル・フィットネス連盟の理事長を務めている。

 松嶋さんは商船の船員だった。運動不足解消のために船内で筋力トレーニングを始めると、一気にのめり込んだ。ボディービルの西日本大会で2位、全国大会で5位になった。1983年に福知山でジムを開設。89年に今の場所に移り、名前をアトラスに変えた。

 校内には大規模なトレーニング施設はない。井本自宣(さだよし)監督(45)が同校の1年生だった89年、オープンしたてのアトラスで筋トレを重ねるようになった。当初は1カ月間だったが、今では4、5カ月間にわたる。

 「アトラス行ってきます!」。今月18日、野手10人の班が自転車にまたがった。約1時間の筋トレを終えると、到着した別の野手11人の班と入れ替わった。

 月初めにはベンチプレスとスクワットの数値を測定する。この数値や体重をもとにメニューを改める。松嶋さんは冬場の成長ぶりを棒グラフに落とす。資料は「冬季トレーニングデータ 勝魂」と名づけ、刺激になるようチーム内のランキングや学年ごとの平均値もつけている。

 右翼手の神内秦(じん)君は4カ月でベンチプレスの数値が60キロから77・5キロにアップ。「野球で使う筋肉をうまく鍛えられた。甲子園では強い打球を打ち、脚力も生かしたい」と話す。

 「選抜でパワーをみせてほしい」と松嶋さん。ジムでは、松嶋さんの妻の良子さん(62)らが営む食品加工会社が焼きサバや黒豆のおにぎりを選手に差し入れている。(高橋豪)

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