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 「カレー坊主」を名乗る僧侶が長崎県大村市にいる。同じインド由来のカレーで、仏教に関心を持ってもらおうと活動している。「仏教へのアクセスを身近にしたい」。そう思うようになったのは、私的な体験がきっかけだった。

 浄土宗白龍山長安寺(大村市武部町)の僧侶吉田武士さん(35)。「いきなりカレー」と銘打ち、市内のアーケード街の施設で3年前から月に1度ほどのペースで、看護師の妻(36)と、カレーを参加者と作ったり、振る舞ったりしている。僧侶の仕事は前もって休日がわからないため、開催がいつも「いきなり」になることから、名付けた。

 大村市内の米穀店の長男として生まれた。子どものころ、長安寺の田中勝宏住職(74)が指導する空手道場に通っていた縁で、就職活動を始めた大学生のころ、「お坊さんの道もあるぞ」と言われた。それまでは考えていなかったが、寺が裕福に見えた子どものころの記憶や知らない世界への好奇心などから、21歳で長安寺に就職した。

 僧侶見習いとして、合掌の仕方から教わった。初任給は3万円。「ショックで打ち砕かれた」。普通の会社に就職した同級生たちをうらやんだ。3年後、僧侶の資格を得たが、夜は僧侶とばれない格好で遊び、酒を飲んでたばこを吸った。

 転機は28歳の時。実家の店が廃業。「僧侶がだめなら店を継げばいい」と考えていた「保険」がなくなった。なぜ店を閉じなければいけないのか、周りの人にどう見られているのか――。悩み苦しみ、父(60)を責めもした。「世の中は思い通りにならない。だから苦しむ。苦しみから離れていくのが仏教」。人前でそう説く自分が苦しみから離れられていなかった。

 寺の仏教書を初めて読みあさった。たどり着いたのは「自業自得」。店はずっと続くという思い込みや人の目を気にする気持ち。苦しみを作り出しているのは自分だと思えるようになると、苦しみが軽くなった。「仏教が仕事でなく生き方になった。それまでは仏教ってありがたいと言わなければならなかった」。以来、酒もたばこもやめた。

 仏壇を置かない家庭が増え、通夜や告別式をせず火葬だけする「直葬」を営む家も出てきた。生活で仏教に接する機会が減るなか、「伝統的な仏教を手に取れる距離に置いておいてほしい」と考え、カレー坊主などの活動を思いついた。

 「インド、タイ、スリランカ、日本……。同じカレーでも、それぞれかなり違う。仏教もすごく似てる。甘口や辛口。大変な修業やそうでもない修業。その人に合うものがある」

 カレーの振る舞いのほか、昨年初めからは本格的に、カレー坊主の名でツイッターやフェイスブックに投稿。5万超の「いいね」を集めたツイートもある。

 「#4月8日はカレーを食べよう」。吉田さんは昨年、ツイッターなどで呼びかけ始めた。仏教の開祖、釈迦の4月8日とされる誕生日を祝う行事「花祭り」を盛り上げたいからだ。

 今年は4月7日、JR大村駅近くで花祭りを催し、訪れる人たちにカレーを振る舞う予定。「お釈迦様を、もうちょっとリスペクトしたい。クリスマスのケーキやチキンに比べ、花祭りは甘茶じゃ弱い。カレーと言えば仏教、仏教と言えばカレーとなってくれれば」

 昨年秋には、全国のカレー好きな僧侶仲間と、肉や卵や乳製品などを使用しないレトルトの「ほとけさまのやさしい精進カレー」を開発。3月中にインターネット販売を始める予定だ。

 田中住職は「フットワークの軽い若い人が積極的なのはよかこと。表ではかっこよく見えるけど地道な活動。寺が力になれることなら何でもしたい」と見守っている。(中川壮)