アカデミー賞受賞作が描いた実話 音楽界の人種差別とは

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軽部理人
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 24日に開かれた映画の祭典アカデミー賞授賞式で、「グリーンブック」が作品賞に選ばれました。黒人差別が残る1960年代の米南部へ、コンサートツアーに向かう天才黒人ピアニストのドナルド・シャーリーと、運転手兼用心棒の白人トニー・バレロンガの友情を描いた作品です。日本では3月1日に公開予定です。

 実はこの映画は、実話を基に描かれています。映画のプロデューサーであるニック・バレロンガさんの父親が、主人公のトニーです。映画のタイトルになっているグリーンブックとは、黒人が米南部で安全に利用することができる施設が記された旅行ガイドブックのことです。1936年から1966年にかけて出版されました。南部では過酷な黒人差別があったため、南部を旅する黒人にはこのガイドブックが必需品でした。

 米国では南北戦争が1865年に終結し、奴隷が解放されました。ですが、その後も差別は続きました。南部諸州では「ジム・クロウ法」が制定され、白人と黒人が使用できるトイレやレストラン、水飲み場などが区別されました。黒人専用のほとんどは、白人専用よりはるかにランクが落ちるものでした。

 こうした黒人差別を無くそうとローザ・パークスやマーチン・ルーサー・キング牧師が立ち上がって公民権運動が起こり、1964年に公民権法が制定されて、ジム・クロウ法は撤廃されました。

 1960年代、音楽界にはどのような差別があったのでしょうか。アメリカの音楽史に詳しい慶応義塾大の大和田俊之教授(48)に解説してもらいました。

1960年代の米国南部の音楽界に残っていた差別や、映画「グリーンブック」が注目された理由を丁寧に解説してもらいます。

 ――映画「グリーンブック」に登場するドナルド・シャーリーというピアニスト。どれぐらいの知名度があったのですか。

 ほとんどないと思います。1…

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