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 旧優生保護法(1948~96年)のもと、12歳ごろに不妊手術を強いられ、憲法が保障する基本的人権を侵害されたとして、神戸市に住む脳性小児まひの女性が27日、国に計1100万円の賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。強制不妊手術問題をめぐっては昨年以降、全国の当事者らが訴訟を起こしているが、脳性まひの人による提訴は初めてで、手術時年齢も女性原告では最年少という。

 訴えたのは鈴木由美さん(63)。脳性小児まひで手足を自由に動かせず、幼少期から車いすで生活。訴状によると、鈴木さんは1968年ごろ、母親らに連れられて病院に行き、誰からも何の説明もないまま不妊手術を施されたという。

 旧優生保護法は遺伝性とされた病気や障害、遺伝性以外の精神障害や知的障害がある場合、都道府県の審査会の決定などを条件に強制不妊手術を認めていた。原告側弁護団によると、両親や兄に障害のない鈴木さんは旧法の条件を満たさないが、条件が厳格に守られずに手術が行われた例もあり、鈴木さんもこうしたケースだった可能性がある。

 記者会見に臨んだ鈴木さんは「好きな人の子どもが本当にほしくて、すごくつらい思いをしてきた。国が法律をつくったから、障害者は普通に生きられなかった。またこんなことが起きないように、顔と名前を出して訴えた」と語った。

 強制不妊問題で国を訴えた原告は全国7地裁20人となった。厚生労働省母子保健課は「訴状が届いていないのでコメントを差し控える」とした。

「体の傷は癒えても心の傷は治らない」

 旧優生保護法(1948~96年)のもと、12歳ごろに不妊手術を強いられたとして国に計1100万円の損害賠償を求める裁判を神戸地裁に起こした神戸市の女性。提訴後の記者会見で顔と名前を明かし、手術後の長い日々の苦しみや、裁判に込めた思いを語った。

 脳性小児まひで、生まれつき手足が不自由だった原告の鈴木由美さん(63)が母親に「入院するから」と言われ、病院に連れて行かれたのは12歳ごろのことだった。手術台の上に寝かされ、医師の手術着やライト、メスが目に入り、恐くなって泣いた。鈴木さんの記憶に残る手術の光景だ。

 15歳ごろ、生理が始まらないことを疑問に思って手術との関係を家族に尋ねると、祖母は「あんたのためにママはしたんや」と言った。会見で鈴木さんは「今でも病院に行くと手術の怖い光景を思い出す。体の傷は癒えても心の傷は治らない」と、とぎれがちな声を必死に振り絞って語った。

 手術後20年ほど、ほぼ寝たきりの生活を送った。しかし、自立しようと一人暮らしにも挑戦。40歳を過ぎてボランティアで出会った男性とも結婚した。だが、相手の家族からは結婚を反対され、男性とも最終的には離婚することになった。

 この日の記者会見。直前まで悩んだが、顔と実名を出して臨んだ。その理由を問われると「同じ人間なのに、障害があるだけで差別的な言葉を浴びせられる。障害があっても普通に生きていけるように……」。そう語って言葉を切った。

全国各地で訴訟

 強制不妊手術問題で提訴した原告は、鈴木さんを含め全国7地裁20人(手術を受けた当事者は16人)に上る。兵庫県内では、昨年9月に明石市在住の小林宝二(たかじ)さん(87)、喜美子さん(87)夫妻と、県内在住の70代の夫婦が国の責任を問い提訴。国や国会が長年、被害者救済を放置してきたのは違法だと主張する。

 訴えられた国側は、行政や国会の当時の対応に違法性はないと反論し、損害賠償請求権も20年の「除斥期間」が過ぎて消滅していると主張。一方で、旧優生保護法が憲法違反だったかどうかには踏み込まず、裁判長から「正面から議論すべきだ」と求められている。

 与党ワーキングチームと超党派議員連盟は昨年12月に当事者を救済する法案の基本方針をまとめ、今国会に提出を予定しているが、反省やおわびの主体が明確でないとして、原告側からは批判の声も出ている。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(山崎毅朗)