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健康医療フォーラム(2)便秘スッキリ めざせ快便

 「朝日 健康・医療フォーラム2019」が1月27日、大阪市北区の中之島会館で、2月3日には東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンスでそれぞれ開かれた。大阪会場では元気に長生きするためのひけつ、東京会場では慢性的な痛みへの対処法、便秘の治療と予防、耳鳴りや難聴とのつき合い方について、専門家が解説した。当日の様子を、4回に分けて紹介する。

「排便は『考える人』の姿勢で」 中島淳さん(横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室主任教授)

 便秘で悩んでいるのは、若い世代では主に女性です。ただ、60歳を超えると急速に患者数が増え、70代後半で男女が逆転します。加齢などで腸の動きが弱くなることが原因です。

 子どもの便秘も増えています。原因の多くは、トイレに行くのを我慢してしまっていること。便が出ないと食欲がなくなり、栄養障害で筋肉が少なくなったり、骨がもろくなったり。元気もなくなります。

 注意して欲しいのが血圧との関係です。若い人はトイレでいきんでもそんなに血圧が上がらない。しかし、50歳を超えるといきむだけで血圧が30~40ぐらい上がります。トイレでいきみ、意識を失う人もいる。便秘を放っておくと命の危険につながります。

 便秘を長く放っておくと、自然な便意がなくなったり、薬に依存したり、治療が難しくなります。50歳を超えて便秘になったら医療機関に行って下さい。

 「完全排便」はとても大切です。短時間かつ1回で完全に排便することで、心臓や体に負担をかけない。速いという点が非常に重要で、便秘でない方がトイレに座って終わるまで、ほとんどは50秒を超えません。10分も排便している人がいますが、血圧も上がってしまいます。

 ポイントは便の硬さ。「ウサギのふんみたいに小さいのに出ない」「摘便している」という患者さんがいますが、便が硬いといきまなければ出ません。残便感も強く、トイレに何回も行くことになります。

 便の理想はバナナ状です。ゴムまりのようにお尻の穴を通るときには細くなり、すっと出る。どうすればバナナ状になるのかを、薬の面から説明します。

 最近まで便秘の薬は日本にあまりありませんでした。たくさんあっても中身はだいたい同じ。ところが最近、新薬が出ています。

 まず、7年ほど前に出たルビプロストン。約200人の便秘の方がのんだら、自発的な排便回数が有意に増えたという。2年ほど前に出たリナクロチドや、昨年発売されたエロビキシバットという薬でも効果があったといいます。

 海外でよく使われるポリエチレングリコールは日本では使えませんでした。ただ、増える子どもの便秘に重要なため、小児科の先生の強い要望でようやく使えるようになりました。

 たくさん薬が使えるようになったので、便秘と思ったら、バナナ状の便を目指して、医療機関で処方してもらって欲しいと思います。

 最後に、トイレに行くことが大事です。患者さんから「薬が効きません」と言われることがあります。そして、そもそもトイレに行く気が起きないというのです。そういう人に、だまされたと思ってトイレに行ってください、と伝えると、次に来たときは患者さんの顔色が違っていて、「行ったら出ました」ということがあります。

 排便姿勢も大切です。ロダンの彫像「考える人」のように、ひじがももに付くぐらい前かがみにすると、すっと出ます。ぜひ試してみて下さい。

    ◇

 <なかじま・あつし> ハーバード大客員准教授を経て、2014年から現職。消化器や便秘改善の専門家として、メディアにも多数登場。

写真・図版 

「朝食・運動で腸を動かす」 鳥居明さん(鳥居内科クリニック院長)

 そもそも、なぜ便秘になるのでしょうか。食べ物は胃で消化され、小腸を通り、大腸の入り口に来るのに5~6時間かかります。ここからゆっくり進み、最終的に1~3日で体の外に出る。その間に水分が吸収されて便が硬くなります。長くとどまれば硬くなって出しにくくなるわけです。

 朝に食事をすると何となくもぞもぞしてくることがあります。食べ物が胃に入って腸を刺激する「胃結腸反射」が起き、便を肛門(こうもん)に送り出すためにポンプのように働く腸蠕動(ぜんどう)運動によるものです。ただ、朝食を抜くとこれが起きなくなって便秘につながります。

 薬が原因となる薬剤性の便秘もあります。血圧の薬や抗うつ薬、麻薬系の痛み止めや抗ヒスタミン薬……。一般のかぜ薬に入っている鼻水を止める成分も腸の動きを悪くします。花粉症の時期は、抗ヒスタミン薬を使うことが多くなるので注意しましょう。

 では、どうしたら便秘を防げるのでしょうか。

 食事は、食物繊維が多く含まれる食べ物をとりましょう。野菜や果物、海藻などです。例えば玄米、おから、ゆでた大豆、ゴボウ、ブロッコリー、エリンギ、ひじき。食物繊維の1日の必要量は男性20グラム、女性18グラムで、和食は非常にいい。ただ、一気にとってしまうと調子が悪くなってしまう人もいます。

 注意してほしいのは油分。太るからと油をまったくとらない人もいますが、適度にとることを心がけたいです。朝食後に排便が促されるので、朝食を食べる習慣をつくって規則的な生活を送りましょう。

 水分も大切です。水やお茶などで1日に1千~1500ミリリットル。一気にとるのではなく少しずつ。大きな湯飲みなどにお茶を入れ、手元に置いてこまめに飲むのがコツです。

 運動については、5分でも10分でも、とにかく歩くことが大切です。速くなくてもいいので楽しく歩いて腸を動かしてあげましょう。

 過労や睡眠不足、不規則な食生活、運動不足などのストレスもよくありません。リラックスしたい時は、鼻で息を吸い、口ではーっと吐く。これを3回繰り返すだけでも、少しイライラが取れるのでやってみてはどうでしょうか。

 寒さも原因になります。まず、水分をとる量が減ります。加えて、寒いと交感神経が優位になって、腸の働きが悪くなってしまうのです。

 便秘で病院に行く時、排便の状態を医師に伝えるのはなかなか難しいですね。そこで使って欲しいのが「お通じ手帳」。便の形やのんでいる薬、ストレスの有無などを記録します。自分で見ることもできるし、医師に相談する時にも活用できる。便秘だと思っていても、実はよく出ていることもあるんです。

 医師に頼るのもいいですが、自分で健康になるという意識は持って欲しいと思います。予防や治療のために行動することが大切。「お通じ手帳」は、そのツールになるので、ぜひ利用してもらいたいです。

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 <とりい・あきら> 東京慈恵会医科大助教授などを経て現職。現在、東京都医師会理事。日本消化器病学会専門医。

加齢による便秘、早期治療で断薬も可能

 ――便秘と大腸がんの関係が気になる方もいると思います。

 中島 便秘の方が大腸がんになるというのはあまり心配しなくてもいいです。ただ、大腸がんの場合に便秘や下痢になることはあります。今までまったく便通に異常がない方や、便秘の方で症状が悪化したという場合は医療機関にかかってほしいです。

 ――病院選びはどのようにしたらいいでしょうか。

 鳥居 どこに行けばいいかわからない場合はまず、消化器内科がいいです。便秘を専門にしている医師もいます。「便秘 内科」をキーワードにネットで調べてはどうでしょうか。

 ――「50年便秘で悩んでいる」という人もいます。

 中島 私のところには全国の医療機関を渡り歩いて来る方も多いです。長期間、自己流や不適切な治療をしている方は非常に大変で、治せたとしても薬をやめることは難しい。加齢に伴う便秘は早い段階で適切な治療を受け、食生活や生活習慣の改善で薬をやめることができる場合もあります。できるだけ早く来てほしいと思います。

 ――市販薬も色々とあります。

 鳥居 まず、完全に治すというよりはうまく付き合っていくという心構えがいいでしょう。市販薬の中には、夜にのんで朝に排便するというような刺激性下剤と、便を軟らかくする緩下剤があります。薬剤師のいるかかりつけの薬局を決め、そこで相談して選ぶのがいいと思います。

 ――お通じ手帳の話もでました。それがない場合は。

 鳥居 日記をつけている場合、そこにお通じのことを加えるのも一つです。また、スマホのアプリもあります。排便の有無と回数、便の形状を記録する。出ない日があっても、次の日に出ればいいやという気持ちで。

 ――朝起きて水を飲むといいという話も聞きます。

 鳥居 朝にコップ1杯の水を飲むと排便にいい。食べ物でなく水でも、胃結腸反射というものが起きて、腸が動き始めてくれます。

◆コーディネーター 朝日新聞アピタル編集部・鈴木彩子