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 生まれ育った京都市北区の上賀茂神社近くに開いた診療所を拠点に、地域の在宅診療に奔走する医師がいる。渡辺西賀茂診療所の院長、渡辺康介さん(70)。「これでもか、というほどおせっかいをしてしまう。でも、疾患以外の問題にも踏み込めないと在宅医療の意味がない」と語る。

 渡辺さんが府立医科大を卒業して選んだのは泌尿器科医としての道だった。1992年に京都府長岡京市に医院を開業。その後、当時中学生だった娘が不登校になったことをきっかけに生活が一変した。

 娘の食事を作り、親の会やカウンセラーの元に通う日々。1日に数時間だけ、自身の医院や内科医の妻が自宅近くに開業した「渡辺医院」の外来で働いた。

 その頃から、渡辺さんには気になることがあった。患者が高齢になるにつれ、「家にいたい」「病院に行きたくない」と言うようになる。どうやって診察を続けていけばいいのか――。「ずっと先生に診てほしい」という声に応えようと、娘が大学生になったのを機に、診療所をつくることを決めた。

 デイケアと訪問診療を専門にする渡辺西賀茂診療所を北区に開設。専門外だった緩和治療についても専門医のアドバイスをあおいで必死で勉強した。2003年からは末期がん患者の在宅緩和ケアを本格的に始めた。対応するのは24時間365日。「何か魅力を感じないとやっていけない」と話すが、それに見合う喜びがある。

 家族と上京区に住む39歳の女性に出会ったのは13年。末期の食道がんで、「どうしても娘と潮干狩りに行きたい」と訴えていた。

 末期がんの患者は「やりたいことがあっても、現実的にはできない、と天井ばかり見ている人が多い」と渡辺さん。残された時間が短いことを理解した女性の決意を察し、看護師2人が同行することで、愛知県の知多半島に潮干狩りに行けるようにした。女性からは笑顔で「あんたら、おせっかいやなあ」と言葉をかけられた。

 女性は潮干狩りのあと、おだやかな表情で亡くなった。人生の最終盤に患者が願いをかなえられたと感じる瞬間に、この仕事をしてよかったという思いがこみ上げる。

 患者の私生活にまで踏み込む渡…

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