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 春色をみつけに京都の古刹(こさつ)・随心院(ずいしんいん)を歩いた。人、人、人の観光寺院と違い、静かな時が流れる。ただ1年前から参拝者が増えている。お目当ては、小野小町の生涯を描いた鮮やかな襖絵(ふすまえ)だ。寺が撮影を認めると、SNSで話題に。「いいね」に誘われ、人が集う。

 京都には伝説が残る。真言宗の古刹(こさつ)・随心院(ずいしんいん)がある地は、平安時代の絶世の美女、小野小町が余生を送ったと伝わる。

 その襖絵(ふすまえ)は本堂の隣、36畳の能之間(のうのま)にあった。薄紅色の古語をさす「はねず色」がまばゆい。襖4枚に描かれているのは小町の生涯だ。秋田での誕生、みやびな宮中の生活、宮仕えを終えた後の余生、小野の地を離れた放浪の日々……。

 カナダから来た客室乗務員の青田陽子さん(45)は「繊細で斬新。鮮やかなピンクが小町に似合う」。

 随心院には、小町が恋文を埋めたと伝わる文塚や、顔を洗ったという化粧井戸が残る。僧侶の阿部真栄(しんえい)さん(45)は「小町はキャリアウーマン。輝いていた。寺にも華やかさを取り入れたかった」。2009年、襖絵を展示した。

 制作したのは、京都を拠点に2人で活動する絵描きユニット「だるま商店」。島直也さん(43)がコンセプトを考え、安西智(さとし)さん(37)がCGで描いた。

 小町伝説は各地に残り、生涯は謎めいている。島さんは当時の衣装や色合いを調べ、文献や郷土史を読み、雅楽も聞いた。「小町が生きていた時代の空気を伝えたかった」

 ただ、しばらくは撮影禁止だった。狩野派の襖絵など寺にある文化財が撮影禁止だからだ。参拝者からは「派手」「奇抜」という声が出た。それでも寺は「新しい文化を発信するのも寺の役目」と外さなかった。

 転機は17年末。「インスタ映(ば)え」が流行語大賞になった。寺は「SNSで拡散してくれれば、寺を知ってもらえる」と18年4月に撮影を認めた。すると、若い女性を中心に参拝者が3割増え、結婚式の写真を前撮りするカップルも増えた。

 伝統を守り、現代を受け入れる京都。数百年後、この襖絵もまた伝統になる。(いいね!探訪記)(文・岡田匠、写真・佐藤慈子)

味わう

 随心院近くの食事処(どころ)「一旦(いったん)」は、随心院の僧侶も通う。ランチには、小野小町にちなんだ「小町御膳」(1200円、税込み)がある。京都の老舗料亭で修行した店主の岩本旦(わたる)さん(50)が毎朝、旬の野菜や魚を仕入れる。串揚げのように串にさした天ぷらや焼き魚、だし巻きなど約10品が並び、人気だ。

 ランチは午前11時半~午後2時(ラストオーダーは午後1時半)、夜は午後5時半~翌午前0時(同午後11時)。月曜定休。京都市山科区小野西浦68の20。電話075・572・8266

行く

 随心院へはJR京都駅から琵琶湖線で山科駅へ。市営地下鉄東西線に乗り換え、小野駅で下車し、徒歩約5分。拝観時間は午前9時~午後4時半。拝観料は高校生以上500円、中学生300円、小学生以下無料。京都市山科区小野御霊町(ごりょうちょう)35。電話075・571・0025

プレゼント

 小野小町の生涯を描いた襖絵のミニ屛風(びょうぶ、縦約20センチ、幅約40センチ)と一筆箋(いっぴつせん、4冊)のセットを4人に。いずれも随心院にある売店で販売されている。

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