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 農家の男性と結婚し、農業にたずさわることに。ところが農村には「嫁の役割」が強く残っていて、いつしか自分らしさを見失ってしまった――。引きこもりのようだった数年を乗り越えて、農村や地域社会を変えようと動きだした女性をご紹介します。3月8日は「国際女性デー」。

 カーテンを閉め切った部屋にひとりうずくまり、テレビのワイドショーをぼんやり見ていた。こんなはずじゃなかった――。レタスの産地として知られる長野県川上村に暮らす新海(しんかい)智子さん(39)は、村にやってきたころの「暗黒時代」をこう振り返る。

 大学3年のころから付き合っていた彼がとつぜん、「実家の農業を継ぐことになった」と言ってきた。そして「結婚しよう」とも。次男だから、家を継ぐことはないと思っていたのに。農業に興味はないし、埼玉出身の都会育ち。田舎暮らしになじめる自信もない。遠距離恋愛を続けたが、「やっぱり離れられない」と結婚を決めた。2006年のことだ。

 村での新婚生活が始まった。一緒に暮らす夫の両親は優しかった。気を使い、生活に慣れるまで農作業はせず、食事をつくるだけでいいとまで言ってくれた。

 だけど村では「○○さんとこのお嫁さん」。夫の父との関係性でしか認識されない。これ、「家に入った」っていうことなのかな? 都内の大学院で教育プログラムを専門に学び、教育分野の仕事で働く自分を夢見た時期もあった。積み重ねてきた「私」がなくなっていく感じがした。

 都会とちがって人間関係が濃密な村では、周りの目が気になって出かけることも難しく感じた。「あまり深い話をするのは、人を選んだほうがいいよ」と助言してくれた人もいて、腹を割って話せる友だちもできない。夫に気持ちを打ち明けたくても、きっと自分のせいだと感じて、自分を責めるに違いないと思うと、言い出せなかった。

 大恋愛して結婚したはずだった。でもごはんづくりの毎日を過ごしながら「私、ただの労働力じゃん。もしかして最初からそのつもりだったのかな」。疑う気持ちすら生まれた。

     ◇

 立ち上がるのに数年かか…

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