奔流TOYOTA〈下〉

非正規という調整弁

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 低成長にあえいだ平成の時代、日本企業は非正規社員の雇用を膨らませた。「右肩上がり」は望めなくなり、よほどのことがないと解雇できない正社員の採用には及び腰になった。

 増産に次ぐ増産を重ねたトヨタ自動車も同じようなものだった。

 拡大路線をひた走っていた2007年1月の夕方、トヨタグループの労働組合でつくる「全トヨタ労働組合連合会」が名古屋の繁華街で開いた集会を取材した。マイクを握った会長の東(あずま)正元(68)は「安定した社会をつくるため、非正規社員の待遇を改善しよう」と行き交う人に呼びかけた。

 私は、組合の「本気度」は眉つばではないかと感じつつメモをとった。正社員にとって「非正規」は、自分たちの雇用を守る「防波堤」にほかならないと、それまでの取材で感じていたからだ。

 リーマン・ショックに直面したトヨタは、正社員の雇用を守りつつ、6千人の「期間従業員」の契約を更新せず雇い止めにした。経営側どころか組合の幹部も淡々と「違法ではない」と話した。

 政府は、非正規雇用の不安定さを少しでも解消しようと12年に労働契約法を改正。期間従業員が通算5年を超えて働いた場合、本人が望めば無期契約に転換しなけばならないルールを導入した。

 トヨタはどう対応しているのか。特定の業界や分野を離れた「遊軍」として企画記事などに関わった17年夏に取材すると、ルールは骨抜きになっていた。

 労働契約法では、契約終了から再雇用までの「空白期間」が6カ月以上あると、以前の契約期間はリセットされる。トヨタは空白期間を従来の1カ月から6カ月に変更した。合法的に、非正規を雇用の調整弁に使えるようにした。記事には「非正規頼み 手放さぬ企業」「日本的経営が変化」といった見出しが並んだ。

 立場の弱い者にしわ寄せ――。グローバル競争はトヨタを労使とも変えていった。

■春闘の「相場役」…

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