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健康医療フォーラム(4)元気に長生きするためのひけつ

 「朝日 健康・医療フォーラム2019」が1月27日、大阪市北区の中之島会館で、2月3日には東京都千代田区のJPタワーホール&カンファレンスでそれぞれ開かれた。大阪会場では元気に長生きするためのひけつ、東京会場では慢性的な痛みへの対処法、便秘の治療と予防、耳鳴りや難聴とのつき合い方について、専門家が解説した。当日の様子を、4回に分けて紹介する。

目が悪いと認知症リスク高い 西田幸二さん(大阪大学脳神経感覚器外科学教授)

 「目は体の窓」と言われます。目から体の健康や病気の状態がより詳しく判断できるようになってきました。

 「眼底」と呼ばれる目の奥を外から見ると、動脈と静脈が確認でき、非常に情報量が多い。古典的には眼底を見て、動脈硬化や高血圧がどの程度進んでいるかが分かるとされてきました。

 いまは検査方法が発展し、光を使って組織の断層像を得る「光干渉断層計」を使えば、より鮮明に分かり、目をみることで、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)のリスクの評価ができるようになってきました。

 眼底写真で網膜の動脈が全体的に細くなっていると、脳卒中になる危険性が正常の人より3倍高い、という報告があります。眼底写真と人工知能を組み合わせると、性別まで予測できます。

 網膜は、受精卵から様々な組織ができる過程で、脳の一部から発生します。いわば目は脳の一部です。

 目が見えづらい状態は1・8倍、失明だと3・6倍、認知症になるリスクが高いという論文があります。眼鏡やコンタクトレンズを付けず、目でしっかり見ない生活をしていると、認知症のリスクが高くなります。

 白内障で視力が低下したままだと、やはり認知症になりやすい。眼鏡やコンタクトレンズで視力を矯正したり、手術を受けて視力を保ったりすることは、認知機能の維持に有益です。

 目から脳の病気の早期診断ができる可能性もあります。脳と同じように、(アルツハイマー病患者の脳に蓄積する)アミロイドβという物質が網膜にも沈着することが観察されています。研究が進み、認知症やアルツハイマー病の検診として、目を見る時代が来るかもしれません。

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<にしだ・こうじ> 米ソーク研究所研究員、東北大教授を経て、現在、日本眼科学会常務理事、日本角膜移植学会理事長、日本コンタクトレンズ学会理事長。

身長が縮んだ…骨粗鬆症のサイン 川畑真由さん(神戸労災病院看護師)

 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、加齢や閉経などさまざまな原因が組み合わさり、骨が弱くなる病気で、全国に男性約300万人、女性約980万人の患者がいます。しかし、治療を受けている人は20%しかいないとされています。

 背中や腰が曲がってきた、身長が若いときから4センチ縮んだ、高いところに簡単にハンガーが掛けられない、背中や腰が痛い、などがサインになります。背中や太もも、手首、肩まわりの4カ所の骨がとくに折れやすいです。

 食生活では1日700~800ミリグラムのカルシウムに加え、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンKもとるといいです。ただし、ビタミンKは納豆に含まれていますが、薬によっては納豆が食べられない場合もあり、注意が必要です。たばこやアルコール、カフェインはカルシウムの吸収を悪くします。

 毎日の運動は、筋力を強化し、体のバランスを改善させます。1日7千~8千歩の散歩が目安と言われています。長く歩けなくても、かかとが低くて滑りにくいスニーカーを履き、日光浴がてら少し散歩するといいでしょう。

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 最近、自宅で転んで下半身の骨を折る人が増えています。電気コードの整理、カーペット四隅を留める、階段や風呂場に手すりや滑り止めを付ける、といった対策で転倒が予防できます。

 検診で、自分の骨の状態を知ることも大切です。これまで骨折したことがない人でも、若い人と比較した骨密度の値「YAM(ヤム)値」が70%を切れば、骨粗鬆症の疑いがあり、薬による治療を始める必要があります。

 バランスの良い食事、毎日の運動を心がけ、毎日「こつこつ」と頑張ることが大切です。

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<かわばた・まゆ> 2008年から神戸労災病院。17年に日本骨粗鬆症学会が認定する「骨粗鬆症マネージャー」を取得。

睡眠5時間未満でリスク 陳和夫さん(京都大学呼吸管理睡眠制御学講座特定教授)

 睡眠時間が5時間を切ると、心血管や代謝障害、心の健康などにリスクがあると報告されています。さらに、不眠、無呼吸などの呼吸障害、どれだけ寝ても眠いという過眠症など、約60の睡眠障害があります。

 睡眠呼吸障害で頻度が高いのは、いびきを伴う睡眠時無呼吸症候群。寝ているときに舌が落ちて気道がふさがります。肥満や加齢のほか、口が小さかったり、あごが下がっていたりする骨格の人がなりやすいです。

 1時間に15回以上呼吸が止まると中等症の睡眠時無呼吸です。滋賀県長浜市の住民約1万人を対象にした調査では、男性の23・6%が中等症以上でした。女性は、閉経後に中等症以上になる人が増えていました。

 心臓の病気との関連が指摘されています。高血圧の人の3割、薬が効きにくい高血圧の人では7~8割がこの病気を合併しているとされます。心臓の病気と同時に、治療しなければいけません。さらに2型糖尿病の人の3人に1人は中等症以上の睡眠時無呼吸であるなど、生活習慣病と合併することも知ってもらいたいです。

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 睡眠時無呼吸は圧力をかけて気道を広げる「CPAP」という機械で治療できます。現在治療中の人は約50万人。年3万~4万人ずつ増えています。60歳以下が半分以上を占めます。

 CPAPによる遠隔医療が昨年4月に保険適用になり、CPAPのデータをインターネット上で見ながら、医師が患者をフォローできるようになりました。いずれは、CPAPに体重計の情報などを組み込み、CPAPをしながら体重も血圧も自宅でコントロールして、生活習慣病を治す時代が来るかもしれません。

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<ちん・かずお> 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠呼吸障害が専門。解析や治療に長く従事。日本睡眠学会の理事を務める。

健康情報、証拠があるものかどうか

 ――目が悪いと、どうして認知症につながるのでしょうか。

 西田 科学的にはまだ証明されていません。視覚や聴覚は、脳に対する入力信号で、脳の細胞を刺激します。それらが脳の認知や感情、情動などとつながっていると考えられています。

 ――眠くない時は無理に寝ようとしなくていいでしょうか。

 陳 一般論として、午後8時に必ず寝間に入ってそこで長時間過ごすより、眠くなった時刻に入る方がいいでしょう。

 ――睡眠薬を処方してもらうことは多いですが、副作用の心配は。

 陳 睡眠時無呼吸症候群などの病気がないのに、寝られない人には投与が認められています。ただ、短時間効くタイプや筋肉も緩むタイプなどたくさんあり、体に量が入り過ぎると、目を覚ましたときにふらふらすることがあります。もらった薬でいまひとつ反応が悪いのであれば、薬を変えるという方法があります。

 ――睡眠薬でふらついて転倒し、骨折という例もあると聞きます。

 川畑 特に夜間、転ぶ人が多いです。自宅だと、慣れているからと真っ暗なまま、トイレに行く人もいますが、必ず電気をつけてほしい。隣で寝ている人に気を使うという人もいますが、床や壁に取り付けて足元を照らす照明もあります。

 ――正しい健康情報かどうかを見分けるコツは。

 西田 きっちりと証拠があることと、そうでないことがちゃんと分けられていないテレビ番組もあります。参考程度に聞いて、興味のある部分は近くのクリニックの先生などに聞いてもらいたいです。

 川畑 「梅干しがいいと聞いて、3食ともに梅干しを食べている」という人がいましたが、それは塩分の取り過ぎになります。かかりつけの医師に確認するなど、自分の状態を知ってから取り入れたらいいと思います。

◆コーディネーター 編集委員・瀬川茂子