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 昨年9月の北海道地震で被災した安平(あびら)町立早来(はやきた)小6年の児童26人が、「8千人の笑顔」を集めている。8千人は町の人口とほぼ同じ数で、「町に元気を取り戻したい」と始めた。6日で地震発生から半年。SNSで拡散された取り組みに、世界中から笑顔とメッセージが寄せられ、子どもたちにも笑顔が戻ってきた。

 「8千人の笑顔プロジェクトに、ご協力をお願いしまーす!」。今月3日、町内であったスポーツイベントの会場に、児童の元気な声が響いた。一角にブースを設置し、町民には「安平町の好きなところ」、町外の人には「早来小への応援メッセージ」を書いてもらい、写真を撮った。室蘭市から来たという川畑和博さん(48)は「安平に来るのは10月のボランティア以来。元気をあげに来るつもりが、自分が元気をもらいました」と話した。

 町は最大震度6強の強い揺れに襲われた。住宅被害は約2800棟にのぼり、早来小では教室の棚や理科準備室の備品が倒れる被害が出た。1週間後に学校は再開したが、余震の度に泣き出す児童もいた。

 6年生は総合的な学習の時間で準備してきた活動が中止に。代わりの活動として児童から「町を元気にしたい」「応援してくれた人に感謝を伝えたい」と声が上がり、8千人分の笑顔を写真に収めることにした。

 昨年11月以降、児童たちは吹雪の中でも町を歩き、役場や商店街で被写体になってくれる人を探した。町外からも集めようと、親戚に手紙を書いたり、転勤した以前の先生らに声をかけたりもした。

 昨年末までに約2500人分の笑顔を集めたが、それ以降は苦戦。そこで町役場が今年2月、フェイスブックで活動を紹介すると、SNSで一気に拡散した。インドネシアやモンゴルからも写真が届き、3月4日現在で集計できた分だけで6千枚以上。5日が締め切りだが、さらに増える見込みで、集計を続けている。

 「みんなのおかげで久しぶりに家族写真を撮れました」「ずっと応援しています」――。担任の冨樫忠浩教諭(44)が毎朝、寄せられたメッセージを読み上げ、廊下の壁に貼る。

 地震後、不安で家族と離れられなくなった中田有咲(ありさ)さんは、応援メッセージを読み、「過去は変えられないから、未来のことを考えよう」と思えるようになった。家が半壊し、避難所でも暮らしたという石井美空さんは「町の好きなところは子どもたちの笑顔、と言ってくれた人のおかげで、またうまく笑えるようになった」と話す。

 3年前から登下校時に見守り活動を行ってきた道念新治さん(81)は、子どもたちの元気な声が地震後に聞こえなくなり、自身も元気を失っていた。昨年11月、町で児童たちに突然、声をかけられた。道念さんが「いつも元気をもらっている。がんばって」と書いて写真撮影に応じると、とびきりの笑顔が返ってきた。

 最近は、雪の上で寝転び、ふざけあいながら学校に向かう子どもたちの声が遠くからでも聞こえてくる。道念さんは「子どもたちは本当に強くなった。町に笑顔を取り戻してくれて、ありがとうと伝えたい」と話した。(遠藤美波)