【動画】女性2人が踊る社交ダンスの写真がツイッターにアップされ、約1万の「いいね」が集まった=兵頭朋子さん提供、村上綾撮影
[PR]

 今年2月、ドレス姿の女性2人が踊る社交ダンスの写真がツイッターにアップされた。投稿したのは松山市のダンサー、兵頭朋子さん(50)。地方からダンス界にできることを考え、たどり着いたのが「男女2人以外の組み合わせでも踊る」。男女のペア以外で公演が行われるのは珍しく、ドレス姿の写真には約1万の「いいね」が集まった。

 2月4日、兵頭さんは写真を投稿し、「これをみてダンス始めた方々がいるのだから、間違いかどうかではなく、やる!」とメッセージを書き込んだ。既成概念にとらわれず、ダンスを始める人を増やしたい、という思いからだ。

 投稿を見て2月の夜、松山市内のスタジオを訪ねると、レッスンを終えたばかりの兵頭さんが手を取ってくれた。「あなたも踊ってみませんか」。顔を上げて動きに合わせるだけで、自然と足が動く。「ほら、もう踊れた。相手が踊れたら初めてでも大丈夫。これが社交ダンスなんです」

 若い頃の兵頭さんにとって、社交ダンスは「おじいちゃんやおばあちゃんが習うもの」だった。転機は、先に始めた母に誘われて行った発表会だった。茶髪のポニーテール、ピンクのドレス、高いヒールの女性がリズミカルに踊っていた。見とれていると、「あの人、熟年のダンサーなのよ」と隣の人が言った。

 「あの人のように年を重ねたい。私も踊りたい」と、その場でダンスを始めようと決心し、プロのダンサーとして競技会やショーに出るまでになった。

 兵頭さんがいた教室には、病気で突然レッスンに来られなくなっても、踊りたいと願う人がいた。ある女性はベッドで昏睡(こんすい)状態になりながら、耳元でワルツを流すとおもむろに腕を上げて踊る姿勢になった。「踊るために戻ってきた」と病気から復帰し、教室に姿を見せた男性もいた。

 「一緒に踊ることで生きる希望を与えられる。こんなにすばらしい職業はない」と思った兵頭さんは2010年、資格試験を受けてプロの教師になった。昨年4月、松山市に自身のスタジオを構え、現在は20~80代の生徒を教えている。夫婦で通う田村譲さん(76)は「現役の頃に戻ったよう。夫婦の話題も増えました」と笑顔を見せる。

 3年前からは多くの人に広めたいと、社交ダンスユニット「SUPERIO」の活動を松山で始めた。社交ダンスの技術を駆使しつつも、カジュアルな衣装を着る、男性3人や女性2人で踊る、ストーリー仕立てにするなど、「まずは楽しんでもらう」が目的のショーを披露している。

 親しみやすさが増した半面、社交ダンス経験者からは「物足りない」と言われたことも。それでも初心者からは手応えがあるという。「社交ダンスは難しそうだからと足踏みしていた人が、『私も踊れるかも』と思ってくれた」。松山で公演を重ね、昨年6月には初の県外公演を徳島で開き、好評を博した。

 伝統を守りつつ、新しいことを試みるのは間違いではない――。そんな強い思いから投稿したのが、3年前に県外の公演で披露したドレス姿2人による社交ダンスの写真だった。兵頭さんと踊った正岡裕子さん(39)は「女性同士だからこそ表現できる美しさを追求したい」。ツイッターには「素敵です」「かっこいい」と多くの反応が返ってきた。「男とか女とかの前に、1人の表現者でありダンサー。表現は自由」というコメントもあった。

 兵頭さんが大切にしているのは、感謝の気持ちをもって手を取り合うこと。「社交ダンスは紳士と淑女の踊り。上手に踊れないことを責めるのではなく、お互いがきょう一緒に踊れることに感謝するんです」。踊る喜びを多くの人と分かち合えるよう、これからもフロアに立ち続ける。

 兵頭さんのレッスンや公演などの詳細は「T’s DANCE Labo.」のホームページ(http://tsdancelabo.com/別ウインドウで開きます)で。(村上綾)