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 昨年11月、ミャンマー政府は、中国国営企業とミャンマー西部ラカイン州の港での大規模開発を合意したと発表した。この事業は中国が進めるシルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、地政学的な意味合いも大きく絡む。超大型プロジェクトで、両国は「将来のミャンマーのための開発」と意気込むが、事業の現場を訪れると、大規模開発を前にした住民の間には、不安が漂っていた。

 ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの話題で取り上げられることが多いラカイン州。縦に細長いこの州の中南部にあり、ベンガル湾に面するチャウピュー港は、中国が2017年、昆明(雲南省)までのパイプラインを稼働させている。中国にとっては、欧米の影響が強いマラッカ海峡を通らずに石油を国内に運べるという意味がある。

 昨年結ばれた合意は、ここに深海港をつくり、さらに経済特区(SEZ)として開発しようというものだ。元々、今回の事業は前テインセイン政権下の15年に4期、総額72億ドル(約8千億円)の計画として発表された。しかし、「債務のわな」を心配するミャンマー政府の主張により、昨年合意したのは1期分(約13億ドル)で、深海港で順調に利益を上げられなければ、SEZ開発には進まないという約束もついた。

 地政学的な意味を見いだす中国に対し、ミャンマー政府側も政治的、経済的理由で中国との関係をむげにはできない。そんな思惑で動く事業の現場を訪れた。

 「今は何もない場所。漁師も普通に魚をとっているよ」。深海港の事業用地を指さして、農家のサイエーさん(39)が教えてくれた。マングローブが生い茂り、漁師が休憩する木造の小屋が見える。数十メートルおきに置かれた赤や黄色の旗は、事業用地を示すものだという。建物はほとんど見当たらない。

 サイエーさんはこの大規模事業に期待を抱いている。「大きな工事が来たら、たくさん仕事が生まれるのではないか」。この地域の人たちはほとんどが漁師か農家。「教育も十分ではないから今のままでは生活も苦しい。いい給料がもらえる仕事を期待したい」と笑顔を浮かべた。

 また、中国企業による「地元支…

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