【動画】かつて地域の中心だった貞山堀。朝日新聞の石橋英昭編集委員が元住民に取材した=東日本放送提供
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 伊達政宗に由来し、宮城県沿岸部を南北に結んでいた貞山(ていざん)堀(貞山運河)の80年前の姿を撮影した映像が見つかった。運河に沿って立ち並ぶ松林や家々、子どもを背負いながら橋の上から興味深そうにカメラを見つめる少女たち……。一帯は東日本大震災で大きな被害を受け、かつての姿はもう無い。震災前の姿を知る元住民たちに映像を見てもらった。

伊達政宗ゆかりの「貞山堀」

 見つかった映像は1940年前後に朝日新聞社が制作した子ども向けニュース映画「アサヒホームグラフ」(当初はアサヒコドモグラフ)の一編。

 貞山堀は、仙台藩の初代藩主・伊達政宗の元で建設が始まった運河で、「貞山」は政宗の贈り名にちなむ。かつては船が行き来し、米や木材など水上物流で大きな役割を担ってきた。

 映像は、塩釜から阿武隈川までの全長約30キロの「日本で一番大きい運河」と紹介、現在の仙台市宮城野区蒲生周辺で撮影されたとみられる。

 一帯は1960年代以降、仙台港建設などで再開発が進み、2011年3月11日の東日本大震災の津波で大きな被害を受けた。多くの家屋が流失し、人の住めない「災害危険区域」に指定され、住民は内陸部へ移転。集落は姿を消した。

「キノコ狩りもした」

 朝日新聞社では昨年12月に、初めてこの映像を公開するとともに、昔の姿を知る人たちに、よみがえった80年前の風景を見てもらおうと、KHB東日本放送(仙台市)とともに上映会を開いた。

 被災地を訪ね、震災前の記憶をたどる活動をする「3.11オモイデアーカイブ」の佐藤正実代表の呼びかけで、元住民ら30人ほどが集まった。上映が始まると、かたずをのむようにして見入っていたが、両岸に松林が立ち並ぶ間を船で進みながら撮影したシーンでは、「津波に遭うまでは、松林がこうやってずっと両側を覆ってた」「小さい時にはキノコ採りもしてたな」と懐かしむ声が上がった。

「高松橋」でカメラ見つめる少女たち

 松林を抜け、集落が現れ始めると、やがて大きな橋が映し出された。欄干に寄りかかるようにして、子どもを背負った少女たちが興味深そうにカメラを見つめる。この橋は「高松橋」だという。

思い出次々「全然先に進まない」

 「『つるちゃん』て人が(橋の)すぐたもとで店やってた」「その隣、たばこ屋さんだべ」。思い出話に花が咲く会場。見覚えのある光景に「ストップ」「ちょっと止めて!」との声が飛び交い、佐藤代表も「なかなか前に進まない」と苦笑い。

 終盤に映る、刈り取った稲束を円錐(えんすい)状に積み上げた「稲積(にお)」の話にもなった。「稲積の中は温かくて、柿をいれて何日かたつと渋さが抜けるの。小学生の時よくやった。みんなやったから取り合いになって」「シマヘビがいたこともあった。卵産んでて」と思い出話は尽きない。撮影時期についても、「秋の収穫終わってからだから、この映像は冬かな」といった情報も。

 結局、2分弱の映像の上映会は1時間以上も続いた。

素っ裸で飛び込んだ

 この映像が撮られた当時を知る、平山勲さん(88)には、自宅を訪ねて見てもらった。少女たちがいた「高松橋」のすぐそばに住んでいて、橋の欄干から堀に飛び込んでよく遊いだり、シジミをとったりしていたという。平山さんは「貞山運河は水が奇麗だったんですね。ふんどしも何もなくて(裸で)泳いだ」と振り返り、80年ぶりの映像に「やっぱり懐かしいね。これ見ると、涙出るね」と、感じ入ったような表情を見せた。

人々の憩いの場、もう一度

 震災の日まで蒲生で暮らしていた佐藤政信さん(72)に映像で映っていたと見られる場所を案内してもらった。貞山堀は埋め立てられた後も、公園となり、蒲生の住民の憩いの場だったという。

 佐藤さんは「花見とか芋煮会とかもあったし、桜や松がいっぱいあって、子どもたちも遊具で遊んでいました」と遠い目に。失われた貞山堀を、再びよみがえらせられないかと願っているという。「例えば、もう一度桜を植えるなどして、もう一度憩いの場として残せないか、そうお願いしたいと思っています」(佐藤岳史、KHB東日本放送・村松美紗)

GHQに接収、曲折経て

 アサヒホームグラフ(当初はアサヒコドモグラフ)は朝日新聞社が1938~43年に制作した子ども向けニュース。映画館などで上映され、フィルムは戦後、連合国軍総司令部(GHQ)に接収されるなどして米国に渡った。その後返還された32回分が、国立映画アーカイブ(旧・東京国立近代美術館フィルムセンター)に所蔵されている。朝日新聞が数年前から調査・整理を進めてきた。

 朝日新聞では、アーカイブ映像…

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