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 動画配信大手の米ネットフリックスが、有名監督の意欲作を次々と送り出している。近年の国際映画祭では、動画配信作に受賞資格があるのかどうかで議論を巻き起こしていたが、多様で普遍的な作品の発信の場としての存在感は高まる一方だ。巨額の資金とスター俳優を投入し、全世界から資金回収を図ることに注力するハリウッド・モデルへの挑戦との見方もある。

 ネトフリ作品の評価を格段に高めたのが、昨夏のベネチア国際映画祭最高賞に輝いた「ROMA/ローマ」。2月の米アカデミー賞でも最多10部門にノミネートされ、最も注目される作品賞こそ逃したものの、監督賞と撮影賞、外国語映画賞の3部門を制した。

 アルフォンソ・キュアロン監督は2014年にSF「ゼロ・グラビティ」で、同監督賞など7部門で受賞した。だが今月4日に朝日新聞の電話インタビューに応じた監督は「今回のオスカーは、重みが全然違う」と語る。

 「ROMA」の主人公クレオのモデルは、監督を幼少期から慈しんでくれた家政婦だ。1970年代のメキシコ・ローマ地区を舞台に、激動の一年を描いた。「社会から見えざる存在である先住民の女性の視点から、社会階級や人種の壁を越えて、慈しみ、いたわり合うという関係を描きたかった」

 監督は劇場公開用に「ROMA」を制作。音響は多方向から臨場感ある音が迫るドルビーアトモス方式を採用し、監督自らが65ミリの大型センサーを備えたデジタルカメラで撮影した。しかし、配給先にはあえて配信大手のネトフリを選んだ。世界190カ国でみられるという利点以上に、ネトフリの姿勢が心を動かしたという。

 「スペイン語でモノクロ映像、役者の大半が無名で、ヒットの要件を何一つ満たしていない。だがネットフリックスは、映画のストーリーや描かれた感情に関心を持ってくれた。映画製作者が何を求めているか寄り添い、映画界を本気で変えようとしている」

 作品は、韓国など30カ国以上で劇場公開され、米国では4カ月にわたり公開中だ。日本でも9日に全国のイオンシネマ48館で公開され、今後劇場数が増える。監督は「ネット配信映画は許せないと怒る人に知ってほしい」と笑う。一方で、「(今作の反響で)大手映画スタジオが、ヒーロー映画以外のジャンルに関心を向けるきっかけとなればいいが」とハリウッドの過度な商業主義を皮肉った。

 「ファーゴ」のコーエン兄弟や「タクシードライバー」のマーティン・スコセッシ……。近年、世界の名だたる監督たちが次々と動画配信に参入している。

 「万引き家族」の是枝裕和監督は米アカデミー賞授賞式前の取材で、「自分がすぐそこ(動画配信)に向かうかどうかは、ちゅうちょがありますけど……。企画が通らないものがいくつかある。『ちょっとハードルが高い、偏差値が高いですね』みたいなことを言われて(笑)。劇場公開を最優先に考えないでアイデアを形にすることを優先するのであれば、配信という選択肢の方が早いのかな」とも語った。

 ネトフリ日本のコンテンツディレクターのジョン・ダーデリアンさんは「よく『世界中の心をつかむ作品はどう作ればいいか』ときかれる。多様な人種の登場人物をそろえるなど、作品に無理やり多様性を詰め込む必要はない。『ROMA』が示すように、個人的な体験や感情を深く掘り下げた物語にこそ普遍性があり、観客に支持される」と話す。

■ネトフリは映画?という議論、…

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