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 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が7月、吹田市と摂津市の市境に、病院や研究所を全面移転する。研究所と企業が、同じ屋根の下で研究できる拠点も整備した。最先端の研究と医療の融合が、期待されている。

移転でアクセス良好に

 国循は1977年、国内で2番目のナショナルセンターとして開設した。

 主に心臓病や脳卒中を専門に扱い、100例を超える心臓移植をしてきた。だが、最寄り駅からは徒歩20分。利便性は必ずしもよくはなかった。昨年6月の大阪北部地震では、屋上にある貯水タンクが壊れ、病院内が水浸しに。建物の老朽化も深刻だった。

 新たな場所は、吹田市と摂津市などが開発を進める「北大阪健康医療都市(健都)」。JR岸辺駅と直結し、交通の便は格段に良くなる。健都は商業施設、居住スペースのほか、昨年12月に一足早く開院した市立吹田市民病院もある。循環器以外の病気で医療の連携が図られるという。

 商業施設内では、塩分ひかえめの「かるしお認定定食」が食べられる飲食店などのテナントが並ぶ。

 居住スペースのマンションは、国循の「健康管理システム」を導入する。入居者が端末を身につけると、血圧や体重などのデータが送られ、そのデータをもとに国循が健康アドバイスをするという。

 心筋梗塞(こうそく)や脳卒中は、救急のなかでも一刻を争う。人口の密集した都市部への移転により、救急医療のアクセスがよくなることが期待される。

 2月1日に摂津市で開いた「循環器救急」をテーマにした市民公開講座には、平日の昼過ぎにもかかわらず、150人近くが来場。市民の関心の高さをうかがわせた。講演した田原良雄・心臓血管内科医長は「急性心筋梗塞の多くは緊急カテーテル治療が必要になるが、どこの病院でもすぐにできる治療ではない。国循が近くなると、より安心した循環器救急になるのではないか」と話した。

企業に場を提供 共同研究を後押し

 移転を機に、新しい研究手法に取り組む。

 その一つが、「オープンイノベーションセンター」の設置だ。医療機器や人工知能(AI)などの会社が同じフロアに共同研究室を構える。企業同士が積極的に「協業」することをめざす。国循の望月直樹・研究所長は「単なる場所貸しではない。共同研究テーマを持ち、停滞しているイノベーションを循環器領域から打破していきたい」と意気込む。

 2月上旬の時点で、すでに15社近くと契約が進んだ。フロアの80%以上が埋まってきているという。

 研究の柱の一つに、循環器疾患を予防、診断補助するAIの開発がある。「胸が痛い」「まひがある」など、循環器の病気は患者の訴えがある程度パターン化できるという。カルテ情報から共通の言葉を読み取り、診断に生かすという。

 循環器病の大規模調査も始まる。循環器病の予防を推進し、病気になる人を減らすなどのねらいで昨年12月、「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立した。同法にもとづき、国循が中心となって、全国の循環器病に関する症例が集められることになった。

 望月さんは「これまで全国の症例登録はなく、脳と循環器がそれぞれの学会主導で症例登録をしてきた。脳と心臓を専門にする国循が、全国の研究機関を下支えする研究拠点になっていく」と話す。(後藤一也)