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 1年半ほど前、東京都の40代の女性区議は、突然おしりをなでる手に驚いた。隣に座っていたのは70代の男性。「やめてください」と言っても、手は止まらなかった。

 男性が現れたのは、当選から1年ほどたったころ。面識はなかったが、「他の政党を支援していたが、あなたを応援したい」と近づいてきた。「政治家の親類」を自称した。

 講演会の案内で自宅に電話をかけたり、スタッフとチラシを届けたり。他の支援者と同じ対応をしていたのが不服だったのか、次第に「なぜ俺の携帯に電話しないのか」「2人だけで飲みに行こう」と要求するようになった。

 「俺は何十票も持っている」という言葉が頭をよぎった。本当かどうかは分からないが、「票が来なかったら」と思うとむげにはできなかった。「お酒、強くないんです」などと丁重に断るために30分近く電話を切れなくなり、話すのが苦痛になっていった。結局、他の支援者2人をまじえて食事した席で、被害にあった。

 別の高齢男性からは「飲みに行けば応援するのに」と言われている。「自分の政策を訴えるために区民に会うのが仕事。飲みに行くことを強要されたとき、どうしたらいいのか」。「政治を変えたい」という政治家としての信念を踏みにじられている気がする。

 朝日新聞社は、4年前の統一地方選で初当選した女性議員544人を対象にアンケートを行い、316人から回答を得た。議員活動の中でセクハラ被害を受けたことがあるか尋ねると、25%が「ある」と答えた。20~40代は、4割超が「ある」と回答。半分は議員からの被害だったが、有権者からの被害も4割を占めた。

 2014年に東京都議会で「早く結婚した方がいい」などのヤジが問題になるなど、議会内でのセクハラはたびたび表沙汰になってきた。一方で、有権者、とりわけ支援者が「相談」や「支援」を装って過剰に近づくハラスメントには声をあげづらく、最近になってようやく表に出てくるようになった。選挙に必要な「票」をちらつかされたり、断りにくい状況で性的な嫌がらせに遭ったり。こうした「票ハラスメント」に女性議員たちがいま、直面している。

 選挙コンサルタントの松田馨氏は「票がほしかったら候補者は頭を下げて当然、という有権者意識が背景にある。地方議員のなり手が減るなか、『票ハラ』は、能力や志がある女性が立候補しにくい状況を有権者が自ら加速させている」と話す。(田中聡子、三島あずさ)