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経済インサイド

 「主力のブレーキパッドは、世界の自動車の5台に1台で採用されています」。その統合報告書には誇らしげな言葉が記されている。独立系自動車部品メーカーの雄「曙ブレーキ工業」(本社・埼玉県羽生市)。「akebono(アケボノ)」のブレーキ部品は自動車レースの最高峰・F1や内外の有名メーカーにも採用される。そんな世界的な名門企業が資金難に陥ったことが1月、突然明らかになった。背景には、自動車業界の厳しい競争と、一寸先は闇ともいえる経営の「落とし穴」があった。

 「曙ブレーキが事業再生ADRを申請」。そんなニュースが流れたのは1月30日。「ADR」は裁判外紛争解決の手続きのことで、それを活用して取引銀行に元本返済の一時猶予を求めるという。有利子負債は1千億円超にのぼる。年間売上高が2600億円超で、世界中の自動車メーカーを顧客に抱える大企業がなぜ、と業界に衝撃が広がった。

自動車部品業界の「理想型」

 曙の社長を務めるのは信元久隆氏(69)。1990年に父から経営を引き継いでから約30年にわたりトップの座にある。日本自動車部品工業会会長や、トヨタ自動車の取引先部品メーカーでつくる「協豊会」会長も務めた自動車部品業界の「顔」だ。

 筆頭株主は、株式の約11%を持つトヨタ。だが、曙はいわゆるトヨタ系ではない。その背景には、同社独特の業界内での立ち位置がある。

 創業は1929年。トヨタや日産自動車、ホンダといった、日本を代表する自動車メーカーの多くはまだ存在していなかった。輸入車がほとんどだった当時、交換部品の需要が高まると考えた創業者が、ブレーキの部品をつくり始めたのが原点だ。

 成長のきっかけは60年ごろ。当時は通商産業省(現・経済産業省)が国内の自動車メーカーを育てようとしていた時期だった。部品メーカーの育成も焦点になっており、トヨタなど自動車メーカーから出資を受けた。さらに米国の自動車部品会社とライセンス契約を結び、ブレーキの部品を手がける会社から、ブレーキ本体も扱う総合メーカーとなった。

 ブレーキ本体と部品をともに手がける総合メーカーは珍しく、曙は「ブレーキの日本代表」ともいえる会社に成長した。86年には初の海外生産拠点を米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁で米国に建設することを決めた。

 2018年3月期の売上高は、GM向けが28%、日産が15%、トヨタ11%、ホンダと米フォードが6%。トヨタ系部品メーカー幹部は「日本の部品メーカーの理想型。バランスが取れていてうらやましかった」と評したうえで、こう言葉をつなぐ。「25%ほどのGMを落とすとこんなにもろいとは、ショックだ」

生産への使命感が「落とし穴」に

 曙に一体何があったのか。経営…

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