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金正男暗殺を追う 第3部

【第一章】夢はアイドル、降ってわいた出演話

 実行犯として逮捕されたフォンのふるさとは、のどかなベトナム北部の農村部にあった。そこでフォンは、5人兄妹の末っ子として育てられた。継母は「ネズミや虫も怖がるような、優しい子でした」と振り返る。順風満帆だった人生の歯車が狂い始めたのは、芸能界入りを目指して都会で暮らすようになってからだ。

 東アジア風の男が声をかけてきたのは、事件の約7週間前だった。韓国の撮影会社のカメラマンだと言う男は、「ミスターY」と名乗った。フォンがアイドル志望であることを見透かしたように、好条件の「いたずら番組」の出演話を持ちかけてきた。

 フォンに演技を指導し、動画を撮影して番組を作るカメラマン。そんなミスターYの肩書は、全くのでたらめだった。後の捜査で明らかになったミスターYの国籍は「北朝鮮」。ベトナム語をりゅうちょうに操る、「工作員」だった疑いが浮上した。

心優しい末っ子

 フォンは1988年、ベトナム北部のナムディン省の農村で生まれた。稲作が盛んな地域で、米粉の麺「フォー」の発祥の地としても知られるところだ。

 記者がフォンの生家を訪ねると、軒先では鶏が駆け、バナナの木が風に揺れていた。

 取材に応じた父親のドアン・バン・タインさん(65)は、ベトナム戦争中に負傷し、右足の足首から先を失っていた。義足で朝夕、近くの野菜市場に繰り出し、清掃員として働いて家族を養ってきたという。月収は共働きの夫婦2人分で約450万ドン(約2万2千円)。ベトナムの平均月収は1人376万ドン(約1万8千円)ほどで、フォンの家族は決して豊かではなかった。古いテレビや家具も壊さないように大事に使っていた。

 フォンは5人兄妹の末っ子だった。自宅には、幼さが残るフォンの写真や、学校でもらった賞状が大切に保管してある。継母のグエン・ティ・ビーさん(56)は「優しくて、ネズミや虫も怖がるような子でした」と話す。タインさんも「とても親しみやすい性格で、美しい子です」と語る。

 フォンは地元の高校を卒業した…

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