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【科学力】

 「イノベーション」という言葉が流行している。新技術の開発や、社会のしくみや制度の変革を通じて、社会や経済に大きな変革をもたらす活動のことを指す。安倍政権はイノベーションを成長戦略の柱に位置づけ、高齢化や地球温暖化などの課題解決と国の経済活性化のため、研究開発に多大な資金を投じている。

 しかし、イノベーションが社会に、利益だけでなく災厄をもたらした例は少なくない。例えば原発。化石燃料依存から脱却する切り札として登場し、日本にとっては「準国産エネルギー源」として安全保障上も重要なイノベーションだったが、東京電力福島第一原発事故が起き頓挫している。

 近年のイノベーションの中にも、対処を誤れば、民主主義や平等といった社会の価値を損ないかねないものも見受けられる。

 生命科学分野で近年登場したゲノム編集技術。新しい作物品種や病気の治療法の開発に役立つと期待される一方で、ゲノム編集で受精卵の遺伝子を改変した「デザイナーベビー」が誕生し、研究開発の規制をめぐる議論が続いている。

 IT分野でも、フェイスブックなどのSNSはプライバシー漏洩(ろうえい)が問題になっている。人工知能は使い方によっては差別を助長する懸念がある。何より、社会の急速なIT化に、高齢者などITに不慣れな人たちは戸惑っている。

 一方で、地球規模で山積する課題を解決するため、イノベーションは私たちが手放すことのできない「武器」でもある。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は貧困や飢餓、環境汚染から教育、雇用まで、人類が直面する17の課題を挙げ、解決に向けた努力を説いた。イノベーションはその重要なアプローチである。

 イノベーションの果実を最大化するため、私たちは何に気をつけるべきなのだろうか。歴史と現状、課題について科学史家の隠岐さや香さんに聞いた。

■現状を周知し、知恵を集める手…

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