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【アピタル+】患者を生きる・食べる「アカラシア」(POEM手術)

 食道の一部がきつく締まって、食べ物や飲み物がのどを通らなくなってしまう病気「アカラシア」。この治療で「POEM」という手術が近年、国内外に広がっています。POEMを開発した井上晴洋・昭和大学江東豊洲病院消化器センター長に聞きました。

――どんな病気ですか。

 食道アカラシアともいい、食道の筋肉が締まって、食べたものが胃に入らなくなる病気です。のどがつまったり吐き気を感じたりして、体重が減る方もいます。原因はよくわかっていません。突然なりますが、他人に感染したり、遺伝したりすることはないと考えられています。珍しい病気で、従来は患者は10万人に1人と言われてきましたが、知られていないだけで、実際はもっと多い可能性があります。

――アカラシアでは食道がどうなりますか。

 食道には、胃とつながるところに「下部食道括約筋(LES)」という筋肉があります。LESは普通、食道の上から食べ物が来ると緩んで胃に通し、胃に食べ物が入ると締まって、食べ物や胃酸が逆流するのを防いでいます。このLESが、緩まなくなってしまい、食べ物が胃に落ちなくなるのがアカラシアです。

――POEMと従来の治療との違いとは。

 従来は固く締まった食道の筋肉を緩める薬による治療、食道に入れたゴム製の風船を膨らませて締まった筋肉を緩める治療、筋肉の一部を切って緩める外科手術がありました。私は、内視鏡(胃カメラ)を使い、患者さんの体の表面に傷をつけない手術方法を2008年に開発しました。これがPOEMです。必要に応じて筋肉を切る長さを変えることもでき、安全性や有効性が確認されたため、16年から保険適用になりました。

――どのような手術方法ですか。

 全身麻酔をして、内視鏡を口から入れます。内視鏡の先からナイフを出し、食道の内側を覆っている粘膜を切ります。そこから食道の粘膜と、粘膜の下にある筋肉の間にトンネルを掘るようにして進み、食道と胃のつながる部分の筋肉の一部を切ります。いわば、食道にきつく締まった輪ゴムを切って、緩めるような手術です。トンネルの入り口はステンレス製の小さなクリップでとめます。これは自然に外れて体の外に出ていきます。

写真・図版

――いつから食べることができますか。

 手術当日は絶食で、翌日に食道の粘膜の状態を確認すれば、水を飲めるようになります。手術3日後から軟らかいおかゆが食べられ、4日後はもう退院です。そのあとは普通に食べられます。退院後すぐ、横浜の中華街でごちそうを食べた患者さんもいます。

――手術の後遺症はありますか。

 手術で食道と胃のつながるところの筋肉を緩めるので、胃から食べ物や胃酸が逆流する「逆流性食道炎」になりやすくなる場合があります。ただし、ごく軽いものを含めれば、半分ほどの患者さんで食道に炎症が起きますが、逆流性食道炎は元々、国民の3人の1人がかかる病気とも言われており、これまで深刻な後遺症は確認されていません。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・小堀龍之)