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 住民の身近な課題を議論する地方議会。だが近年、議員の「なり手不足」が目立つ。29日告示の長崎県議会議員選挙でも16選挙区のうち7選挙区が候補者の数が定数を超えず、無投票になる公算が大きい。解消しようと、議員報酬の引き上げを検討する議会もある。

 スーパーやドラッグストアなどが立ち並ぶ南島原市有家町の国道251号。少し奥まった市街地に入ると、空き家やシャッターを下ろしたままの店舗があちらこちらで目につく。

 「かつては町の目抜き通り。国道の完成とともに寂れていきました」。付近をよく散歩するという南島原市元幹部職員の男性は、こう説明する。

 2006年に8町が合併して誕生した南島原市。人口は3月1日時点の推計で4万3600人ほど。近年は700~800人前後のペースで減り続け、合併時より約1万人減った。

 南島原市が人口減少対策として期待を寄せるのが、国と県が整備を進める「島原道路」。南島原市と諫早市を結ぶ全長約50キロの地域高規格道路で、開通すれば所要時間は現在の90分から40分に短縮されると見込む。

 企業誘致や農業、観光の活性化につながると期待する声もあるが、男性は「ストロー効果で、より大きな街に人の流れや消費が吸い取られてしまうのでは」と旧市街地の二の舞いを懸念する。

 今回の県議選では「こうした地域課題の論戦を交わしてもらいたい」と思っていたが、定数2の南島原市選挙区で立候補を表明しているのは自民公認の現職と新顔の2人のみ。無投票となる可能性が高い。「選挙を通じて地域の課題を知る住民は多い。無投票で機会を失うのは残念」と話す。

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 今回の県議選は、全16選挙区のうち南島原市を含む7選挙区で無投票になる可能性がある。7選挙区なら過去最多の前回と並ぶ。

 「正直言って人材がおらん」。国民民主党県連の高比良末男副幹事長は告示を目前に控えた3月半ば、8年前の民主党時代の選挙用パンフレットを見ながら、そうぼやいた。当時は公認候補計12人を擁立したが、今回は長崎市、佐世保市、諫早市、西彼杵郡の4選挙区での計5人にとどまる。

 今回は、南島原市選挙区を含め定数2以上の選挙区で擁立を目指してきた。しかし、支持母体の労組側は「勝てる所を重点に」との姿勢。8年前の選挙では4人の候補者を出した三菱重工グループ労連長崎地区本部も長崎市選挙区に労組出身の新顔1人を出すのがやっと。地区本部の組合員は4年前に比べて約1300人減った。

 国政にも振り回された。この4年間、政党名は民主から民進、希望の党、国民民主へと変わった。県連が主催する「政治スクール」は18年度以降、開いていない。高比良氏は「短期間でコロコロと変わり、人材発掘どころじゃなかった」と振り返る。

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 一方の自民党。全選挙区に35人の公認候補を擁立するが、西彼杵郡区(定数2)では後任選びが難航した。

 2月上旬、今季限りで引退を決めている三好徳明県議(79)=7期=のもとに谷川弥一衆院議員(77)が訪れ、慰留したが、三好氏はかたくなに断ったという。

 自身も引退を見越し、昨春ごろから後継者探しを進め、夏には地元の時津町議が内諾。ところが、10月に家族の反対を理由に断ってきた。その後、複数の人に接触したものの決まらず、最後は政治家を志したいとUターンしてきた30代の女性に白羽の矢を立てた。一緒にあいさつ回りを重ねたが、1月半ば体調不良で辞退。後任探しを断念した。3月、自民党は無所属で立候補する予定だった元時津町議の新顔を公認した。

 三好氏は「人材を育ててこなかった自分の責任。議会を見てもらうなど、若い頃から政治に関心を持ってもらう機会をいかに作っていくかが課題」と話す。

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 「議員報酬を増額することが望ましいとの意見が多数を占めた」。3月20日の諫早市議会本会議で、定数削減や議員報酬(月40万5千円)の在り方を検討してきた特別委員会の並川和則委員長はそう報告した。

 きっかけは17年の市議選だ。定数30に対して立候補は32人。特別委では「議員年金制度が(11年に)廃止され、老後について不安」「生活基盤を安定させなければ若い世代が立候補しない」といった意見が出たという。今後、有識者でつくる審議会が設けられ、増額への可否を含め具体的な議論に入る予定という。

 なり手不足解消に向け、諫早市議会に先駆け、小値賀町議会は前回の統一地方選前の15年3月、18万円の議員報酬を50歳以下に限り30万円に増額する条例を制定。しかし、翌月の町議選に50歳以下の候補者は立候補しなかった。

 条例は昨年3月、廃止。議会では「報酬が上がったから立候補したのだと周囲に思われてしまう」「純粋に議員になりたい気持ちの者が立候補を躊躇(ちゅうちょ)してしまう恐れがある」といった意見が出たという。(堀田浩一)