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 食物アレルギーと診断されて、卵や牛乳や小麦を食べないようにしているけれど、このままでいいのかな――。そんな悩みを持つ人はいませんか? 食べ物の除去を続けている人の中には、「実は食べられる」ケースもかなりあるのだそうです。食物アレルギーについての研究や正しい知識の普及に力を入れる小児科医、国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師に、食物アレルギーとの正しいつきあい方を聞きました。

実は食べられる人とは?

――日本では乳幼児の5~10%に食物アレルギーがあるといいます。3歳時点で何らかの食べ物を除去している子どもも約10%いるとの報告もあります。

 アレルギーと言われて食物を除去している人には、三つのタイプがあります。一つは、確固たる根拠に基づかずに除去していて、実は食べられる人。もう一つは、症状は出るのだけれども、少しは食べられる人。そして、ほんの少しの量も食べることが難しい人、の三つです。

 赤ちゃんのころに発症した食物アレルギーは、小学校に入るころまでに約8割は自然に治っていきます。従って、今行っている除去は本当に必要なことなのか、幼児期にきちんと診断することが大切です。

――三つのタイプについて、詳しく教えてください。「実は食べられる人」とはどのような人ですか。

 血液検査でアレルギー反応の原因になるIgE抗体の値が陽性だから「やめておきましょうね」と近所のお医者さんに言われた、怖いから、口の周りがちょっと赤くなったから……。こうした理由で食べることを避け続けている人たちです。

 こうした人は、まずは正しい診断を受けるために、実際に原因と疑われる食物を食べてみる「食物経口負荷試験」(負荷試験)を受けることが大切です。負荷試験の結果、除去しなくて良いことが分かれば、生活がガラッと変わります。

負荷試験で食べられる範囲わかる人も

――負荷試験とは、どのようなものですか。

 実際にアレルギーの原因と疑われる食物を食べてみて、症状が出るかどうかを調べる試験です。

 試験の前には、全体でどれくらいの量を、どれくらいに分割して、どれくらいの時間間隔で食べるかといったプロトコル(試験の計画)を、きちんと説明してから行います。負荷試験は、保険診療で受けることができます。

 いま、負荷試験には「少量」「中等量」「日常摂取量」という三つの目標量の設定があり、基本的には少ない量から試していきます。少量というのは、小麦ならゆでうどん2グラム、牛乳3ミリリットル、卵なら全卵1~2グラムくらいです。少量をとることができれば、次のステップを検討することができます。

 

――「症状は出るけれど、少しは食べられる人」というのは、どのようにしたら分かるのでしょう。

 負荷試験を受けることでわかります。負荷試験の結果、症状を伴わず安全に食べられる範囲が分かった人には、安全に食べられる量を食べていくように食事指導を行います。今は、なるべく完全除去にならないように、「食べられる量は食べていく」というのが、食物アレルギーの管理の基本です。

 ほんの少しでも食べられる範囲をみつけて食べていくことができれば、完全除去を続けるよりも生活の質は良いですし、食べられる範囲を安全に広げていける効果があることが、ここ数年の研究で分かってきました。

重症の子どもたちへの対応は?

――では、「ほんの少しの量も食べることが難しい人」とはどのような人たちですか。ほんの少し食べただけでも強い症状が出るような場合は、除去を続けるしかないのでしょうか。

 負荷試験の最初に設定される少量すら食べられない状態が、3歳とか4歳、5歳くらいになっても続く人もいます。こうした重症のアレルギー患者さんには、「経口免疫療法」という方法が、専門的な医療機関で臨床研究として進められています。

――負荷試験に基づく食事指導とは違うものですか?

 経口免疫療法は、1グラムにも満たないようなごく微量の負荷試験を行って安全に食べられる範囲を見つけた上で、医師の指導のもとで少しずつ食べる量を増やしていくものです。

――食物アレルギーの治療法として確立しているのでしょうか。

 いいえ。そもそも、わが国において積極的な治療法として保険診療になったものはまだありません。経口のほか、経皮、舌下などの方法で、食物アレルギーの原因となる抗原を体内に入れて、症状を出にくくするための免疫療法が研究されていますが、現時点ではすべて研究段階です。

 より安全に効果的に、症状を出にくくする方法を、研究で探っています。

負荷試験を受けたい…医療機関の探し方

――いずれにしても、まずは自分が三つのタイプのどれに当たるのかを、知ることが大切ですね。負荷試験を受けてみたいと思ったとき、医療機関はどのように探したらよいでしょう。

 私が世話人代表を務める食物アレルギー研究会のホームページに、負荷試験を行っている全国の医療機関のリスト(https://www.foodallergy.jp/ofc/別ウインドウで開きます)があるので参考にしてください。

 このリストは、小児科学会の研修教育施設といって、小児科をもつ大きな病院で、アレルギーの専門性をもち、最低でも年間50件以上は負荷試験を行っているような施設のリストです。全国に300カ所近くあって、今は空白県はほとんどありません。自宅から多少遠くても、負荷試験を受ければ世界が変わりますので、足を伸ばしてみてください。

 食物アレルギーの負荷試験では、場合によっては発疹やせきなどの症状が誘発される場合があります。リストにある医療機関では、迅速に対応が取れる態勢を整えて実施しています。過去に食物を食べて症状があり、IgE抗体が陽性という人は、漫然と原因食物を避けるだけではなく専門の医療機関に相談しましょう。

 

 大切なことは、悩んだ時にネットサーフィンをして不適切な情報に惑わされるのではなく、正しい情報にアクセスすることです。国の事業として日本アレルギー学会が運営している「アレルギーポータル」という総合情報サイト(https://allergyportal.jp/別ウインドウで開きます)もあるので、参考にしてみてください。

 そして、最終的には専門の医療機関で負荷試験を受けて、自分の体の状況を正しく把握し、事故が起こらないように気をつけながら、食べられる範囲を食べていくことが大切です。

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<えびさわ・もとひろ>

 小児科医、アレルギー専門医。国立病院機構相模原病院臨床研究センター副センター長。東京慈恵医大客員教授。食物アレルギー研究会世話人代表。(聞き手・鈴木彩子)