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 21世紀枠で出場の富岡西は26日の1回戦で、選抜大会4度の優勝を誇る強豪校東邦(愛知県)に挑んだ。1―3と惜敗したが、選手たちが自主的に判断する「ノーサイン野球」を甲子園でも実践した。地元阿南からの応援団で埋め尽くされたアルプス席は大歓声に包まれた。

6回に同点 食らいつく

 三回表、右打者の粟田翔瑛君(3年)は左打席に立った。4球目で右打席に戻ると、フルカウントまで粘って右飛に倒れた。

 ベンチに戻った粟田君を、選手たちは「お前、何やってんねん」と迎えた。「緊張をほぐそうと思った」という狙いは的中し、選手たちに笑顔が戻った。昨秋は遊撃手だった粟田君。大会前に捕手に移り、中学時代にもバッテリーを組んだエースの浮橋幸太君(3年)と一緒に夢の舞台に立った。

 東邦の1点リードで迎えた六回。死球の走者吉田啓剛君(3年)を一塁に置き、打席には安藤稜平君(同)。3球目をヒットエンドラン。打球が右前へ抜ける間に、吉田君は一気に三塁に到達した。富岡西の「ノーサイン」の攻めに歓声が起こった。

 昨秋の四国大会の準決勝・松山聖陵戦でも「ノーサイン」で三盗を決めた吉田君。この日も「以心伝心」で走ったという。「ヒットエンドランというプレーを、安藤と頭の中で共有できていた」

 2死一、三塁から、木村頼知君(3年)の右翼への適時二塁打で同点に追いついた。

 七回に2点を失い、そのまま試合終了。坂本賢哉主将(3年)は「選抜に出場できてたくさんの人が喜んでくれた。でも、やっぱり勝ちたかった。出ただけでも喜んでくれる人たちに勝って喜んでもらいたかった。この経験を夏に生かしたい」と話した。

 ひとりで投げきった浮橋君は「最初は緊張したけど、投げていて楽しかった。あんな雰囲気はなかなか味わえない。こう思わせてくれる甲子園は素晴らしいなと思った。夏にもう一度戻ってきて、校歌を歌いたい」。

 小川浩監督は「あとは守備力と投手力、そして思うように打球を転がせる打撃。選手たちはまだ発展途上だが、よくやってくれた。夏がある。徳島大会を勝ち抜きたい」と話した。(佐藤常敬)