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 米・ニューヨークに拠点を置く映像作家が、高校野球を題材にしたドキュメンタリー作品をつくった。夏の全国選手権大会が第100回を迎えた昨年、時代とともに変わっていくこと、変えてはいけないことの間で葛藤を抱えながらも、甲子園へ挑む指導者に1年間密着した。

 作品の題名は「HOME 我が愛しの甲子園」。主人公は、2009年の第91回大会に出場経験がある神奈川・横浜隼人高の水谷哲也監督だ。映像作家の山崎エマさん(29)とNHKとの共同制作で、30日午後11時からNHK・Eテレの「ETV特集」で放送される。昨年8月は横浜隼人高の選手にスポットを当てた25分の番組、「遥かなる甲子園 Diaries of youth」を放送しており、今回は第2弾になる。

 撮影班は毎日の練習に試合、水谷監督の自宅や徳島の実家まで訪れて丹念に取材し、甲子園への熱い思いを浮き彫りにした。また、20代のときに水谷監督のもとで修業し、菊池雄星(マリナーズ)、大谷翔平(エンゼルス)らが輩出した岩手・花巻東高の佐々木洋監督にも同時期に並行して密着。水谷監督があこがれた徳島・池田高の故・蔦文也監督の資料映像も交え、世代の違いで高校野球が変化していく姿も描く。全編を通じて内容を補足、説明するようなナレーションは挟まず、映像と取材対象の言葉だけで高校野球の1年を淡々と追った。

 英国人の父、日本人の母を持つ山崎さんは、神戸市で生まれた。米国の大学で映像表現を学び、絵本「おさるのジョージ」の著者、レイ夫婦のドキュメンタリー作品などを制作した。「五輪もあり、世界が日本に注目している時期。次の作品は、世界に向けて日本を発信できるものにしたかった」と山崎さん。17年に東京でも家を借り、リサーチを始めた。

 その年、久しぶりに高校野球のテレビ中継を見ていると記憶がよみがえってきた。「横浜高校とか、駒大苫小牧と早稲田実の決勝とか」。打ち合わせをするオフィス、ごはんを食べに行った食堂、いつでもどこでもテレビに高校野球が映っている光景も、懐かしかった。「翌年の大会が100回だと知って、今しかできない、と」。取材先を探しているとき、知人から横浜隼人高を紹介され、そこから花巻東高へとつながっていった。

 山崎さんの夫で、作品のプロデューサーでもあるエリック・ニアリさん(37)も高校野球と縁があった。米国の大学を卒業後、03年に来日。岐阜県御嵩町の東濃高校で英語指導の助手を1年間務めた。「ふと私がグラウンドに出たとき、全員がそろってあいさつしてくれた光景は、今も心に残っています」と振り返る。

 約300時間に及んだ撮影を通じて山崎さんが感じたのは、日本の文化と高校野球との共通性だ。「いま、世界から日本を見るとアニメ、スシ、フクシマに少子化。高校野球は課題もありますが、道具の整理整頓、時間の正確さ、思いやりなど、日本の文化が凝縮されていました。長く日本を離れていたからこそ実感できる、日本のよさが高校野球にはありました」(山下弘展)

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