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 山間部の川沿いにある香川県観音寺市粟井町の奥谷地区。昨年の西日本豪雨で7月7日午前9時半、避難指示が市内で初めて発令された。

 自治会によると、約70世帯200人余りが暮らす。地区の多くが土砂災害の警戒区域か特別警戒区域にあり、最寄りの避難所は、地区の中心から約3キロ下った公民館だった。

 自主消防団の中山典彦団長(55)らが各世帯に避難を呼びかけ、渋る人は自治会の宮崎隆会長(68)らが説得に回った。市のまとめでは、公民館への避難者は午前9時の1人から午後5時には最多の43世帯63人になった。

 足が弱っていて、「みなに迷惑をかける」「トイレがしんどい」と自宅に残る人もいた。宮崎会長は「互いに顔見知りで、誰に助けが必要か分かっている。親類宅やホテルを入れると、半数以上が避難したのでは」。翌8日に解除され、大きな被害はなかった。

 防災に自治会などの地縁は重要だが、親密さや備えには違いがある。障害や介護、一人暮らしなど避難時に助けが必要な住民を把握するよう、市町には「避難行動要支援者」の名簿作成が義務づけられている。

 総務省消防庁が昨年6月現在でまとめたところ、県内は全17市町が作成済みだった。計約3万人が記載されているが、内実には差がある。

 観音寺市は、障害者手帳、要介護認定など各部署で把握する名簿を元に、人口の3・1%にあたる1863人を記している。しかし、多くは市からの通知に返答がなく、同意を得て個人情報を消防、警察、民生委員などと共有しているのは355人にとどまる。

 さらに、その約3割は避難を支援する人を明記できていないという。担当者は「災害時に全員は確認できない。支援者が見つかるよう地域と連携したい」と話す。また、西日本豪雨では、奥谷地区の1人が以前に亡くなっていたことが分かり、情報の精度にも課題が残った。

 東かがわ市は、同意を得た829人を記す。県内で唯一、全員の避難場所やかかりつけ医なども含む個別計画を作った。民生委員らが年に1回確認し、情報を更新しているが、担当者は「タイムリーな情報把握は難しい。高齢化で、支援のなり手がいなくなってきている」と言う。

 一方、人口最多の高松市は約4万人が対象。通知に対し、同意した約1万2千人を記載している。善通寺、小豆島、三木、綾川の4市町は、個人情報の共有、個別計画の作成ともに進んでいない。

 丸亀市川西地区の自主防災会は、地区の約7千人に対し、支援の必要な125人程度の個別計画を独自に作り、地区内外で訓練もする。岩崎正朔(せいさく)会長(75)は「行政は、平等に進めようという意識が強いように感じる。自治会の加入率が低かったり、リーダーがいなかったり、てこ入れが必要な地域に力を入れたほうがいい」と指摘する。

 南海トラフ地震による県内の被害は、最大で死者6200人、全壊・焼失3万5千棟と想定されている。(三島庸孝)