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【アピタル+】患者を生きる・食べる「クローン病」(炎症性腸疾患、IBD)

 大腸や小腸に炎症が起こる難病「クローン病」は、食事が制限されるなど、生活の質に大きく影響することがあります。しかし、診断や治療が近年めざましく進歩し、悪化を防ぐことも出来るようになってきています。埼玉医科大総合医療センター消化器・肝臓内科の加藤真吾准教授に聞きました。

――今回の連載に登場した男性は、当初「肛門(こうもん)周囲膿瘍(のうよう)」と診断され、診断がつくまでに10年ほどかかったそうです。

 肛門の近くに穴ができてうみがたまる「肛門周囲膿瘍」や、うみの通り道の穴が肛門からおしりの皮膚までつながってしまう「痔瘻(じろう)」などは、クローン病の特徴的な症状です。男性は大学生だった1984年ころに同様の症状があったようですが、当時はクローン病の患者自体が非常に少なく、診断することが難しかったのではと考えられます。今なら、肛門の専門病院などでは、痔の手術をする際に必ず大腸内視鏡カメラで検査するので、クローン病の診断もつきやすくなっています。

――この病気はどのように進行していくのでしょうか。

 クローン病は腸管の粘膜だけでなく、より深い筋肉まで炎症が起こるのが特徴です。口から肛門までの消化管にどこでも炎症が起こり、少しずつ進行します。同じ炎症性腸疾患(IBD)の潰瘍(かいよう)性大腸炎は粘膜だけの炎症ですが、クローン病のほうが、腸管に穴が開いて腸管同士がつながる「ろう孔」や、腸管が狭くなる「狭窄(きょうさく)」など、様々な腸管合併症が起きやすくなります。

写真・図版

――治療法はどう変わっているのでしょうか。

 治療薬は以前、腸の炎症を抑える抗炎症薬やステロイド、免疫調整薬などに限られていました。炎症を繰り返して腸管が狭くなってくると、腸閉塞(へいそく)を起こして食べ物が流れなくなってしまうことがあります。「バルーン拡張術」では、風船を付けた内視鏡を入れて膨らませ、狭くなっている部分を広げますが、これも限界になると腸を手術で切るしかありません。この病気は特に若い人が発症しやすいのですが、食欲が勝って食べてしまい、症状を悪化させてしまうこともありました。昔は手術を繰り返し、小腸がどんどん短くなって食事ができなくなる患者も多くいました。

 しかし、2000年代に入って生物学的製剤のレミケードが登場し、大きく治療が変わりました。この病気は根本的な原因がわからないので「完治」させることはできませんが、この薬が出たことで、症状を抑えて生活が送れるようになる「寛解(かんかい)」を維持することも可能になりました。新しい薬も続々と登場しており、一つの薬が効かなくても次の薬を試せるようになりました。

――クローン病を疑ったほうがよい症状は。

 下痢や腹痛の症状は炎症性腸疾患だけでなく、様々な病気にみられます。ただし、体重が減り続けていたり、下痢を繰り返していたりする場合はクローン病の可能性もあるので、専門の病院を受診したほうがよいかと思います。いまはカプセル型の小さな内視鏡をのみ込んで、腸内を撮影する「カプセル内視鏡」もあります。腸管が狭くなってしまった人には使えませんが、負担が少ない検査法です。

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・佐藤建仁)