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 東京五輪・パラリンピック開幕前の2020年春の開業を目指し、東京都港区で建設が進む話題の新駅に、古殿町産のスギ材が使われている。林業を営む町民が減るなか、町の関係者は「絶好のPRになり、林業再興のきっかけにもなる」と期待を寄せている。

 JR山手線の品川―田町駅間。ビルが林立する都心に、広大な空き地が広がる。そこで建設されているのが「高輪ゲートウェイ駅」だ。

 周りには足場が組まれているものの、駅舎はほぼ姿を現している。内部は線路から天井まで広い吹き抜け。すでに開業時の姿になっている屋根は、東京ドームの天井のように自然光が取り込める幕が使われている。その屋根の部分の「はり」に使われているのが古殿のスギ材だ。目をこらすと、木目が確認できた。

 はりは、木材製造と加工を手がける「藤寿産業」(郡山市)の「ハイブリッド集成材」だ。Hの形をした鉄鋼の空いた部分を、スギの板を貼り合わせた木材で埋めて補強している。

 蔭山寿一社長と西村義一専務は「曲げに弱い鉄に木を添えると強度は1・5倍になります。木には自然の優しさがある。鉄と木のいいところをとりました」と声をそろえる。

 同社がハイブリッド集成材の研究を始めたのは15年ほど前。大手鉄鋼会社と組み、製品化にこぎ着けた。そして5年ほど前、高輪ゲートウェイ駅のデザインを手がけた建築家の隈研吾さんから、駅舎の材料としてハイブリッド集成材が「指名」された。蔭山社長は「技術力を認めてもらえました」と喜ぶ。

 隈さんからは木材について、東日本大震災の被災地産を使うよう要望があった。そこで同社が推したのが、古殿のスギ材だった。「県南は風土と気候がよく、さらに古殿は山林の手入れが行き届いていて、優良な木材の産地です」と西村専務は話す。

 古殿の木材を新駅に使うため、同社と町は「秘策」を練った。駅ができる港区には、公共施設などの建物に国産の木材を使うよう促す制度がある。町は2016年度に港区と協定を締結。晴れて古殿のスギ材が用いられることになり、6~8メートルのハイブリッド集成材100本ほどが昨年3月までに納入された。

 町によると、05年に町内で1ヘクタール以上の山林を保有する家は782戸あったが、15年は695戸に減少。林業の会社も222から109に半減している。後継者不足も深刻だ。町は山林維持のための補助制度を設けたり、古殿産の木材を使った住宅建設などに補助金を出したりして、林業を再興しようとしている。

 それだけに町の木材が話題の駅に使われるのはうれしいニュースだ。岡部光徳町長は「古殿の木材を良質なものと認められたのはとてもありがたい。林業関係者にとっても、町にとっても励みになります」と声を弾ませた。(鈴木剛志)