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 6月に開幕するサッカー女子ワールドカップ(W杯)フランス大会で、日本女子代表(なでしこジャパン)は2大会ぶりの頂点を目指す。ただ、国内の女子サッカー人気はいま一つ。そんな状況を変えようと、ひとりの選手が動き始めた。3月に慶応大学総合政策学部を卒業した籾木結花(日テレ)。なでしこの主力として期待される23歳は、自ら集客アップの企画を立ち上げるなど人気復活をめざして奔走する。「女子サッカー界の新しいロールモデル(手本)になれれば」と語る。(堤之剛)

 生まれ育った米国の地で、鮮やかな弧を描いた。

 日本代表として臨んだ国際大会「シービリーブスカップ」、3月2日のブラジル戦。前半44分、左からのパスを、利き足の左で軽くボールをタッチすると、GKの頭上を越えた。「昨年からトレーニングしてきたこと」。そのシュートは、英公共放送BBCも称賛。大会3試合で日本トップの2ゴールを挙げた。

 身長153センチの体で巧みにボールを操る。細かいタッチを駆使してドリブルで仕掛ける。視野が広く、時には力強いシュートも放つ。日本代表の攻撃に独特のリズムを与える選手だ。

 17歳以下(U17)やU20の世代別のW杯に出場し、「自然と自分のサッカー人生のなかにW杯があった感覚」という。中学1年から日テレの下部組織に所属し、中学3年の時にトップチームに上がった。代表選手が多数プレーする環境で力を伸ばし、日テレでは10番を背負う。

 この技巧派は、プレーヤー以外の一面も持つ。所属の日テレでは、なでしこリーグの集客を主導した。

 昨年10月の神戸とのホーム戦で「集客プロデューサー」に就任。2017年の日テレの1試合平均観客数は1029人だったが、5千人を目標に掲げた。企画を「もみPプロジェクト」と銘打った。

 試合前の選手の集合写真に一緒に入って撮影できる特典がついた特別席や、選手がデザインしたタオル販売を考案。目標には少し届かなかったが、4663人が集まった。閑散としたいつものスタジアムとは異なる雰囲気。「シュートが外れたときの(観客の)ため息が聞こえたのさえ、楽しかった」と振り返る。

 なでしこリーグの観客数は日本がW杯で優勝した11年以降、減少傾向にある。それを、中学3年にトップチームでプレーするようになってから体感し続けている。日本女子サッカーの未来を案じ、観客を増やしたいとずっと考えていた。

 慶大では「スポーツビジネス」を主に研究した。選手の立場で主体的に観客動員のために働くのは簡単ではない。しかし、卒論のテーマを「日テレ・ベレーザの集客活動について」と定め、動き出した。神戸戦ではグッズ販売にあわせ、観客へのアンケートも実施。およそ150人から集めた回答から集客への課題を把握し、約4万字の大学の卒論としてまとめた。

 4月には、大学の体育学部生の就職支援やアスリートを招いた社内研修を企画する企業に入社。スポーツと関わる事業を成功させるため、他の社員とミーティングを重ねている。

 将来的に見据えるのは、女子サッカーのイメージを上げるブランディングだ。「素晴らしい人間性をもった女子サッカー選手はたくさんいる」と籾木。世間でなじみの薄い選手たちの内面や人間性を広く発信し、女子サッカーの人気につなげられないか、と考えている。

 日本女子サッカー界では所属チームの関連企業で働く選手が多いなかで、珍しい進路を選んだ。籾木は「他の選手たちにもこういうキャリアがあることを示していきたい。もしプロ選手として契約していただいても、こうした事業を今の会社となんらかの形でやっていきたい。サッカーだけをやっているというのは、自分の頭のなかにない」。

 新しい道を切り開く。

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〈もみき・ゆうか〉 1996年、米国ニューヨーク生まれ。FWやMFとしてプレー、日テレでは昨年までのなでしこリーグ4連覇などに貢献。日本女子代表通算24試合出場、8得点。

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