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 高松市東部の庵治地区に、円錐(えんすい)台のガラス張りの建物がある。1996年につくられた旧庵治町の議会棟だ。周囲の建物と合わせ、今は市庵治支所として使われている。

 「平成の大合併」で、香川県内は5市38町から8市9町に再編された。庵治町は高松市と2005~06年に合併した6町で唯一、市議がいなくなった。これは11年から続いている。

 町議会(定数12)の一員だった新上(しんじょう)隆司さん(63)は07年、合併してから初めての市議選(定数51)に立ち、1人区の庵治選挙区で当選した。

 しかし、11年と前回15年は定数が40に減り、選挙区が市全域に広がった。新上さんら2人が庵治から挑んだが、そろって落選。今回は出ず、ほかに庵治から出る人もなさそうだ。

 新上さんは、庵治地区コミュニティ協議会長を務めている。残念なのは、町民運動会ができなくなったことだ。町が毎年催していたが、合併後は10周年を記念して16年に開いただけ。市から協議会に出る「地域まちづくり交付金」でやり繰りした。

 市が合併後に制度化した交付金は、市内の44協議会に人口や面積などに応じて払われ、「特別扱いはない」(市の担当者)。新上さんによると、16年の運動会の運営費は、他の行事やイベントの費用を減らして捻出したという。

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 県内の市町議員は、合併とともに大幅に減った。7町が合併した三豊市は96議席から22議席に、5町合併のさぬき市は66議席から20議席になった。

 高松市は、1市6町の計124議席が約3分の1に。庵治地区の有権者は4500人ほどで、前回市議選の最下位当選者の2498票や投票率を考慮すると、地区を中心にした得票で当選するのは難しい。

 新上さんは、市役所が役場よりハードルが高くなったと感じている。「市道の草刈りや用水路の整備といった細かいことも、昔は役場に行けば、すぐ対応してくれた」と言う。今は当選同期の市議らを通じて市に対応を求めているが、「よその地域の市議は、自分のところで精いっぱい」。

 合併は、地域の産業にも影を落とす。「花崗岩(かこうがん)のダイヤモンド」と呼ばれる庵治石は、安い海外産の普及や人口減に伴う需要減などを背景に、苦境に陥る。地元の商工会によると、墓石などに使われる「切り石」は、ピークだった05年の9943トンから18年は3156トンに激減した。

 庵治石で車などの模型をつくり、市のふるさと納税の返礼品にも採用されている岡田昌臣さん(49)は「町だったときは、地場産品として要望が通りやすかった」と振り返る。

 模型は注文から1年待ちの人気だが、売り上げの大部分は墓石関係だ。墓石への依存度を下げるため、展示会に参加し、海外へ営業に行くのに、補助金など行政の支援は欠かせない。市議選が近づくが、「地区外の候補者で、共感できる人に投票するしかない」。(江湖良二)