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 2月24日に96歳で亡くなった日本文学者、ドナルド・キーンさんのお別れの会が10日、東京都港区の青山葬儀所で開かれ、1500人が参列した。冷たい春雨の中、キーンさんが愛したオペラが流れ、枝垂れ桜と笹(ささ)竹が飾られた会場で和やかに献花が行われた。

 親交のあった小説家、平野啓一郎さんは「キーンさんの日本文学の読解に、源氏物語という日本文学の精髄と、戦場で一兵士がつづった生々しい日記の両方があったことは重要でした。キーンさんほど事あるごとに日本人とは何かと尋ねられた人はいなかったでしょう。作家たちも日本の文学について意見を聞きたがった。私もしばしば質問してしまった」「この会のあとも、廊下でばったりキーンさんと出くわして『いかがですか、いわゆる日本のお別れの会のご感想は』と尋ねることができそうな気がします。キーンさんはあのユーモラスな表情を浮かべて『初めての経験です』と笑ってお答えになるかもしれません。寂しいですが、この先もキーンさんの記憶と著作は私の人生の重要な場所を占め続けることでしょう」とお別れの言葉を述べた。

 喪主で養子の誠己(せいき)さんは「父は日本の雨が大好きでした。きょうのような日は窓から外を見て『雨で緑の葉が洗われて美しい』と言っていた。この雨は悲しみの雨ではない、父の喜びの雨だと思います。平和を愛し、戦争が大嫌いな父でした。自分の希望通り、夢に描いた通り、日本の土になりました」と話した。(中村真理子)