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 統一地方選の後半戦が全国の市区町村で始まった。「新しい風を吹き込みたい」と訴える新顔も少なくない。しかし、初当選後に待ち受けるのは、「数は力」という議会の現実だ。対面する役人や首長も手ごわい。そんな壁を突き崩して、いかに役所の行政風土に新風を吹き込むことができるのか。一介の区議会議員から「東京都議会のドン」と呼ばれるまでになった内田茂・元都議(80)に、地方議会を生き抜いてきた半生を振り返ってもらった。(別宮潤一)

 ――内田氏の名前が全国区になったのは2016年夏。自民党都連の方針に反発して都知事選に立候補した小池百合子氏が、「『都議会のドン』の支配ではなく、都民のための都政を取り戻す」とやり玉に挙げた。それまで11年間、もともと国会議員のポストだった自民党都連の幹事長として都議会に強い影響力を持っていた。しかし、政治家人生の振り出しは、決して恵まれていたわけではない。1975年、東京都千代田区議選に36歳で初挑戦。550票を得て、定数36の35番目での当選だった。

 「区議選に出るまでは、鳩山威一郎参院議員の事務所にいた。地元の千代田区議会は自民党が2派閥にわかれ、そこに強力な共産党・社会党の区議もいて、自民党が主導権を握れていなかった。『お前なんとかしろ』ってことで区議会に送り込まれることになった。実家の2軒隣の町内会長も立候補すると言っていて地元票は期待できなかったから、区内全域で自分のポスターを貼らせてくれる人を探した。告示後は、ポスターを貼ってくれた人の家の前で『ありがとうございます』って演説した。それで何とか当選したんだ」

 ――政治に関心を持つきっかけは、東京・神田の実家の火事だった。一家離散の危機だったが、安井謙・参院議員(当時)が知的障害のある弟が入れる施設を紹介してくれ、「政治は生活につながっている」と実感したという。区議1期生になった内田氏は、自民党が2派閥にわかれる議会の中で変革を試みる。

 「半年は黙って見ていた。当時は野党の区議の方が達者でね。なんでこの人たちは区政の話をこうも知っているんだろう、数の多い自民党会派と議会で同等に戦えるんだろうって思ったわけだ。彼らの動き方も参考に、条例の作り方、議会の回し方、一生懸命覚えたよ。最初の1期4年で全部覚えたな。結局、派閥ができるのは議長をやりたい人たちが複数いて、取り合いになるから。すべては人事なんだよ。気の利いた先輩議員に幹事長代行をしてもらい、自民党の人事を回した。幹事長や議長のポストをあっちとこっちでうまく融通している間に、派閥がなくなって、まとまれたんだ」

 ――2期目は1001票で4位当選。3期目には区議会議長に就く。共産党など野党とも連携し、千代田の都市計画作りに深くかかわっていった。

 「当時、千代田は(人口が郊外に流出するドーナツ化現象で)人の住まない街だった。これ、行政の失敗作だから。なんとか土日も人がいる街をつくろうと言って、神田、神保町、万世橋(秋葉原)など6ブロックごとに都市整備を考える協議会を区に作らせた。そこには住民だけでなく、千代田で働く勤め人も呼ぶ必要があるだろうということで、東電や東ガス、財閥系ディベロッパーの専務たちにも協議会に入ってもらい、(共産党など)野党系の一部も入れた。共産党の区議会トップが小学校の同級生。当時、議会と区長は基本的に対立していたから、区議会でまとまらないと向こうの思い通りになっちゃうよ、と。街づくりの長期計画を議会主導で作ろうという目的が合致したら、区議全員でやろうと口説いた。木造住宅密集地域などを区画整理したり、区有地を宅地にしたりって、そういうことには向こうは関心が高かったから。街づくりの方向性を一緒に決めれば、共産党も反対できないだろう、という目算はあったな」

 ――1989年、千代田区選出の自民都議が区長選に立候補したため、内田氏が都議補選に立候補して当選を果たした。

 「当時の鈴木俊一都知事の下にいた副知事に陳情した際に、『ここは(千代田区議会とは)違うんです』と言われたわけだ。『ここは知事がすべてなんです』と。それでこっちは『それは議会制民主主義に反する。だから、そういうものを変えに来たんだ』と反論した。そういうことを言ったのはあんたが初めてだ、と言われた」

 ――5カ月後の都議選でも当選し、2期目に入る。この都議選で自民党は43人が当選。内田氏ら2期生は10人で会派内の最大勢力になった。ここで、内田氏が仕掛けた。

 「俺ら若手が最大勢力だったけ…

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