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 舗装されていない土の道には、爆風で吹き飛ばされた家々の窓ガラスが散らばり、息子を亡くしたという高齢の女性が路上で泣いていた。川向こうでかすかに白い煙を上げている爆発現場の化学工場を見ていると、異臭を感じ、のどと目がちりちりと痛んだ。

 中国東部・江蘇省の沿海部にある塩城市の化学工場で3月21日午後、大きな爆発が起きた。同日夜の発表では、死者は6人、翌22日の発表では死者62人、94人が重傷……。死傷者数が刻一刻と増加していく中、現場を目指した。

 現場は中国東部の沿海部。現代的なビルが立ち並ぶ都市を想像していた。だが実際には、経済発展のために環境や健康への悪影響が懸念される施設を受け入れ、危険と隣り合わせで住民たちが暮らしている場所だった。

 爆発事故が起きたのは、農薬を製造する化学工場「江蘇天嘉宜化工有限公司」。2007年4月、塩城市響水県にある陳家港化学工業団地内で操業を開始した。事故当時は約200人が働いていた。中国のSNSに投稿された爆発時の動画を見ると、突然炎と爆音が響き、黒煙が高くあがり空を覆った。

声を上げて泣く老母

 22日午後、工場から南西に3キロ離れた同省連雲港市に入った。川向こうに工場団地を臨む集落は、家々の窓が全て割れていた。周囲を畑に囲まれ、爆風を遮るような建物はなく、爆風が直撃したようだ。

 未舗装の狭い道に沿って、土壁の家が続く。住民たちは、道や家に散乱したガラスの片付けに追われ、共同のゴミ捨て場にはガラス片の山ができていた。近くの小学校は被害を受けて臨時休校になり、子どもたちも片付けを手伝っていた。

 道の真ん中で、大声で泣いている80代の女性がいた。周りの住民によると、女性の50代の長男は、爆風で割れた家の窓ガラスが頭と首に刺さり死亡したという。

 「大事な息子だったのに。なぜこんなことになったのか」

 涙をぬぐう女性の背を住民たちがさすっていた。50代の女性の家は、道路に面した台所のガラスが窓枠ごと吹き飛ばされ、寝室の天井の一部も崩落していた。「突然地鳴りがしたので、地震だと思った。次の瞬間突風が吹いて、ドアも吹き飛んだ。本当に恐ろしかった。昨夜は一睡も出来なかった」と話した。

 空気汚染も深刻だった。江蘇省政府の環境部門が爆発のあった夜、風下500メートルの地点で大気を観測したところ、それぞれ環境基準の59倍と361倍の二酸化硫黄と窒素酸化物が検出されたという。約2・5キロ離れた地点でも、21倍と120倍を検出した。

 50代の男性は「昨夜は一晩中異臭がひどくて、のどが痛い」と話した。窓も割れ、ドアも変形して閉まらず、風が吹き抜ける家で一晩を明かしたという。

深刻なモラル欠如

 事故直後から、爆発を起こした会社の安全管理に大きな問題があったと、中国メディアは取り上げた。

 地元当局の発表などによると、同社は18年2月、江蘇省の安全生産監督管理局が実施した安全検査で、農薬製造に使うベンゼンやメタノールの保管タンクに、緊急時の遮断弁が設置されておらず、危険物の管理状況に問題があると指摘を受けていた。

 さらに、作業手順のマニュアルの不備や、工場設備の巡回検査の未実施、安全管理責任者が定められた試験を受けていないなど、計13の問題が指摘された。当局は改善を指示し、同社は操業を一時停止。同年12月、再度の調査で安全対策がとられたと判断され、操業が再開されたばかりだった。

 また同社は、工場で出た化学物…

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