【動画】第23回手塚治虫文化賞の選考委員を務めたマンガ研究家・南信長さん=竹谷俊之撮影
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 有間しのぶ氏については“軽いコメディーもしくは4コマギャグの作家”という認識だったので、受賞作には驚かされた。

 コメディータッチで笑わせつつも、戦前戦後を生き抜いた女性たちの壮絶な人生と日本の現代史を交錯させ、さらに東日本大震災後の社会のあり方までを射程に捉える手腕に脱帽。ホステスたちやマスターはもちろん、店の客、主人公の家族や友人まで、すべてのキャラクターをそれぞれの人生を背負った一人の人間としてきっちり描いているところもすごい。今回の受賞を機に広く読まれてほしい作品だ。

 同様に、新米ケースワーカーの目を通して生活保護の実像に迫った『健康で文化的な最低限度の生活』も、広く読まれるべき作品。作家と編集部がこの題材を選んだこと自体、勇気ある決断だ。取材の手間と精神的負担、表現への配慮、商業作品としてのエンタメ性の確保など、ひとつのエピソードを世に出すまでにかかるエネルギーは想像を絶する。選考会の前に小学館漫画賞を受賞したこともあってか支持は広がらなかったが、今後も応援していきたい。

 新生賞の『あれよ星屑(ほしくず)』はマンガ大賞で2番目に推した作品だった。戦争の傷跡、とりわけ戦地から帰還した人の精神の傷をここまで深く鮮明に描いたものはなかったのではないか。重厚にして軽妙な物語の堂々の完結に拍手。ただ、賞の性格からすれば、オカヤイヅミ『ものするひと』も捨てがたい。「文学的」と評されるマンガは多々あれど、同作は作家の脳内で文学が生まれる過程を描いている点で、まさに新しく刺激的だ。

 短編賞の『生理ちゃん』には「そう来たか!」とヒザを打った。この“生理のつらさの可視化”は男にも非常にわかりやすい。一方、男の性欲も「性欲くん」として可視化。各話のオチも最高で、説教臭くないのがいい。中高生の課題図書にぜひ。

みなみ・のぶなが 1964年大阪府生まれ。マンガ解説者。朝日新聞読書面でコミック欄を担当するほか、各媒体で活躍。著書『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『やりすぎマンガ列伝』。近刊に『1979年の奇跡 ―ガンダム、YMO、村上春樹―』がある。

■1次選考で推し…

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