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 広島、長崎で被爆し、その後ブラジルに移住した被爆者が日本在住の被爆者と同様、窓口で医療費を支払うことなく病院を受診できる仕組みが今月整った。現地から一時帰国した被爆者が10日、広島県庁を訪れて感謝を伝えた。

 導入されたのは、サンパウロの日伯友好病院など3医療機関が医療費を被爆者に代わって日本側に申請する制度で、韓国に続く実施となる。

 日本に住む被爆者は、指定医療機関で窓口負担なく受診ができるが、海外ではこの運用ができず、いったん被爆者が窓口で支払い、申請に基づき、後から払い戻す仕組みをとってきた。

 ブラジル在住の被爆者援護の窓口になっている広島県は、医師会などとの共同事業で現地の医師を研修に招くなど、援護の充実に取り組み、今回の制度につながった。

 この日、県庁を訪れた「ブラジル被爆者平和協会」のメンバーらが、高齢で来日できなかった森田隆会長(95)の礼状を湯崎英彦知事に手渡した。

 湯崎知事は、現地の病院に支援への感謝を伝えるため昨年7月に現地を訪れる予定だったが、西日本豪雨のために断念していた。「長らくお待たせをした。(現地の被爆者たちが)熱心に粘り強く働きかけてきたことが実った」と述べた。盆子原(ぼんこはら)国彦副会長(78)は取材に「協会が35年前にできたとき第一に掲げた目標がやっと実現した」と語り、目を潤ませた。

 厚生労働省によると昨年3月末現在、31の国・地域に3123人の被爆者がいる。ブラジルには韓国、米国に次ぎ3番目に多い90人が暮らす。

 日本政府は長く在外被爆者を援護の枠外に置いてきた。1970年代以降、海外からの提訴が相次ぎ、現在は被爆者健康手帳交付などの申請が現地でできるようになった。在外被爆者への医療費支給を認める判決は2015年に最高裁で確定。ただ、医療費の窓口負担が伴うという壁は、韓国、ブラジル以外の国では残っている。(宮崎園子