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【まとめて読む】患者を生きる・食べる「意識障害」

 京都府に住む女性(44)はマラソン大会の出場中に突然、倒れました。心停止の状態で病院に運ばれ何とか一命を取り留めたものの、重度の意識障害が残りました。機能の回復を目指し、本人と家族らがこだわり続けているのが「おいしいものを口から食べる」ことです。

マラソン中に倒れ心停止

 京都府に住む女性(44)は今年3月、ハワイ島で1週間過ごした。大学准教授の夫柘植知彦(つげともひこ)さん(51)、長女(9)らと一緒に車いすで旅行した。

 6年前の事故で心停止が続いたことによる低酸素脳症で、重度の意識障害が残った。以来初めての海外旅行。ハワイ島は16年前に結婚式を挙げた思い出の場所だ。

 旅行中、知彦さんは知り合いのコーヒー農園の直営店でコナコーヒーを手に入れた。このコーヒー豆は、結婚式の引き出物にした思い出の品。滞在先のコンドミニアムでいれたコーヒーを女性の口に運んだ。女性はゴクンとのみ込むと目を細めた。その様子を知彦さんは格別な思いで見守った。

 女性は2013年12月、地元のマラソン大会に出場している最中に倒れた。8・8キロのコースのゴールまで残り1キロほどだった。救急車が到着した時には心停止の状態。心機能が回復しないまま、宇治市の第二岡本総合病院(当時)に運ばれた。病院で心臓が動き出した。心停止していたのは約45分間。集中治療室で人工心肺を取り付けるなど、治療が続いた。

 知彦さんもマラソン大会に出場するはずだったが、熱を出して家にいた。女性が倒れたことを友人から聞き、病院に駆けつけた。処置室の前で医師から「安心できない状況です」と告げられた。「このまま妻を失ってしまうのか」。ふと、昨晩の口論が頭に浮かんだ。仲直りはできていない。「まだけんかは続いているのに」

 祈る時間が続いた。数日間、女性への処置の同意を何度も求められ、その度に怖さとプレッシャーに押しつぶされそうになった。

 3日後、自発的に心臓が動きだして一命はとりとめたが、寝たきりの状態が続いた。医師は「意識と運動機能の回復は未知数です」と言った。

 一般病棟に移っていた3週間後、主治医から胃に穴を開け管で直接栄養を入れる「胃ろう」をつくる提案をされた。「つい先日までごはんを食べていたのに」。知彦さんは即答できなかった。医師の友人たちに相談のうえ、「長い目で見れば必要だ」と判断し、胃ろうをつくることに同意した。

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