娘と性交、無罪判決の衝撃 「著しく抵抗困難」の壁

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河原理子
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 性暴力をめぐる司法判断に、疑問の声が広がっている。女性の意思に反した性交だと認めつつも、「抵抗が著しく困難だったとは言えない」や「抵抗できない状態だと男性が認識していなかった」などの理由で無罪とする判決が続いているためだ。なぜ、そういう判断が出るのか。

 11日夜、東京駅近くの路上に、400人以上が集まった。手には「#MeToo」「裁判官に人権教育性教育を!」などのプラカード。作家の北原みのりさんらが呼びかけた、「性暴力と性暴力判決に抗議するスタンディング・デモ」だ。「無罪判決が相次いで、意味がわからないし、怖い。これでは被害者が声をあげられなくなってしまう」と北原さんは語る。

 北原さんが言う判決の一つは、3月26日に名古屋地裁岡崎支部で言い渡された。19歳だった実の娘への2件の準強制性交罪に問われた男に対し、「娘の同意は存在せず、極めて受けいれがたい性的虐待に当たる」としつつも、「抗拒不能だったとはいえない」として、無罪とした。

 「抗拒不能」は「意思決定の自由を奪われ、抵抗することが困難な状態」といった意味。耳慣れない言葉だが、準強制性交罪の要件だ。日本の刑法は「同意のない性交」だけでは罰せず、「暴行または脅迫」を加えて性交した場合は強制性交罪(旧・強姦(ごうかん)罪)に、「心神喪失または抗拒不能」に乗じた場合は、準強制性交罪が適用され、刑の重さは変わらない。

 さらに、罪が成立するためには、被害者の抵抗が「著しく困難」になるほどの「暴行・脅迫」や「抗拒不能」が必要だと解釈されてきた。

 今回の判決は、被害を受けた女性が中学時代から性的虐待を受け、抵抗し難い状態にあったことと、事件の少し前にも父親が暴力をふるったことは認めたが、女性が父親に「服従・盲従せざるを得ないような強い支配従属関係にあったとは認められない」などとして、抵抗が「著しく困難」とまでは言えないとした。

 この判断に対し、専門家から…

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