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 茨城県取手市の土地区画整理事業が、取手駅西口周辺で進んでいる。活気が失われつつある駅前で、中心になる「A街区」(約0・7ヘクタール)を造成。民間の再開発事業を後押しし、「街の顔」にふさわしい魅力的なビルを整備する計画だ。活性化の切り札になるのか。14日告示の取手市長選を前に、現状と課題を探った。

 市には苦い教訓がある。現在のA街区のそばに1985年、再開発事業で約103億円を投入し、8階建てのビルを建設。「取手とうきゅう」が一括借り上げて開店したが、郊外の大型店に客を奪われ、2010年に閉店。駅前の空洞化に拍車がかかった。

 「再開発ビルは、駅西口につながるデッキや交通広場とともに都市基盤として整備したが、駅前の大規模商業施設の活動は難しくなっていた」。市の担当者はこう振り返る。

 ビルは2年余り「空き家状態」が続き、12年暮れに地権者らが「再生(リボーン)」の期待を込め、「リボンとりで」の愛称で再開。1~5階にスーパー「西友」やインテリア・雑貨店、靴店などが入ったが、いまだに6~8階は空き家のままだ。

 市は駅から約2キロ離れた桑原地区の約68ヘクタールに大型商業施設の誘致を計画し、「商業の核」に位置づける一方、駅前の一等地にあるA街区を「市再生のシンボル」に据える。「区画整理事業で造成した土地の高度利用を図り、にぎわいを生み出すため」(市都市整備部)に再開発事業を支援し、「活性化の起爆剤」として期待する。

 市は事業協力者を公募し、「大京・戸田建設共同事業体」の提案を選んだ。この提案では、250戸のマンションやサービス付き高齢者向け住宅、保育施設などを備えた高層ビル(地上30階、地下1階)と、公共施設や商業施設などが入る4~5階建てのビルを建設。駅西口のデッキを延ばして両ビルと結び、回遊性を高める計画だ。

 背景には追い詰められた市の現状がある。18年の人口は約10万7千人。転入超過になったとはいえ、05年の合併時より6千人近く減った。JR取手駅の1日平均乗車人数も、同年開業したつくばエクスプレス(TX)の影響で、17年度には約5千人減少。市の玄関口は活気を失い、TX沿線のつくば市や守谷市のはざまに埋没しかねない。

テナント誘致 課題

 区画整理事業は今年で26年越しだ。1993年、約6・5ヘクタールを対象に開始。地区・街区ごとの土地利用を進めたが、事業期間は延長を繰り返し、30年後の2023年にようやく完成の見通しに。現在の市長はすでに4人目だ。

 事業区域のうち、「C街区」に14年、民間の医療モールと市の立体駐輪場が完成。「B街区」には翌15年、健康、医療、福祉などの複合施設「取手ウェルネスプラザ」を整備した。

 A街区は「事業のメイン」。14年から、ビルの解体が始まった。まだ築50年前後の古いビル6棟が並んでいるが、所有者がこの夏から20年春までに解体する予定だ。この後、市は23年春まで3年かけて造成。狭くて朝夕の混雑が激しい駅前の交通広場も拡張し、利便性を高める。

 約20人の地権者で5~6月に準備組合を設立。共同事業体の提案を基に、再開発事業計画の素案を練り、都市計画決定を経て23年に工事に着手し、早ければ24年に再開発ビルが完成の見込みだ。市は組合の指導・助言にあたり、補助金を出して支援する。

 とはいえ、計画の中身はこれから。事業費の概算も不明だ。低層のビルに公共施設を整備することで付加価値を高め、交流人口の促進を狙うが、ビルを活性化の呼び水にするには、「魅力ある商業テナントを誘致できるかどうかが課題」(市都市整備部)になる。

 また、区画整理事業期間が大幅に延びたため、事業費も膨らんでいる。総事業費は約176億円。うち、解体した80棟近い建物を中心にした家賃減収・仮住居補償などの「中断移転補償」は、98年から約15億円にのぼり、19年度も約7千万円かかる。事業完了まで補償金はさらに増えていくことになる。

 地権者の1人は「街の顔」づくりへ向けてこう話す。「駅前の公共性が高い土地に税金を投入するのだから、単に駐車場にするよりも、街づくりのために土地の高度利用を図ることが必要ではないか」(佐藤清孝)