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 2023年春の北陸新幹線金沢―敦賀間開業に向け、沿線の市町は備えを進める。新駅のない鯖江市では、在来線特急の存続が見通せない中、コミュニティーバス路線の見直しなどで市民の足の確保を目指す。敦賀市では、まちのにぎわいにつなげるための取り組みが動き始めた。

 「次のバスまで2時間。待てないのでタクシーで帰ります」。4月中旬の午後、鯖江市内に住む女性(84)は、JR鯖江駅前でがっかりした様子だった。

 福井市からの買い物帰り。バスの時間を考えて乗った列車が遅れ、市のコミュニティーバス「つつじバス」に乗り継げなかったという。「車が運転できない高齢者には鉄道とバスはとっても大事です」と話す。

 北陸新幹線敦賀開業に伴い、県内では石川県境から敦賀駅まで79・2キロの並行在来線がJR西日本から、県や自治体などでつくる第三セクターに経営が移る。

 福井県の試算では設備などの初期投資に307億円必要で、開業年度で8・2億円、10年後は15億円の赤字が出る見通しだ。自治体が出資する基金で赤字を埋める算段だが、運賃が引き上げられる可能性はある。

 一方で、新幹線が開業しても、鯖江市内に新駅はできない。最寄り駅は越前市にできる南越駅(仮称)。鯖江駅から約5キロ離れ、在来線とも直結していない。市はJR北陸線の特急サンダーバードを並行在来線でも運行するよう国やJR西日本に求めているが、実現の道は見通せない。

 こうした状況を踏まえ、市は今年度、庁内に「総合交通課」をつくった。コミュニティーバスの利便性の向上や南越駅(仮称)との交通網の整備など交通体系を総合的に練り直す。鯖江インターチェンジ付近で停車する高速バスの増便、高齢者のために一般の人の車に相乗りするライドシェア構想も検討する。

 牧野百男市長は「並行在来線に特急が止まらなくても、それを補完する交通網を市民の利便性の観点から整備していく。そうすれば新幹線開業のメリットは生み出せる」と語る。

発展可能性を秘め

 敦賀市の「玄関口」、JR敦賀駅の西側では、市が駅利用者のための立体駐車場を建設中だ。市有地にホテルや拠点施設を整備する計画で、事業主体の民間業者と協定を交わした。

 駅から北へ約2キロの金ケ崎地区。第2次大戦中に敦賀港に上陸したユダヤ難民らについての史実を伝える資料館「人道の港敦賀ムゼウム」の移転・新築工事が3月下旬から始まった。約12億円をかけて明治後期から昭和初期に敦賀港近くにあった4棟の建物も復元する予定だ。

 地元の商店街でも動きが出ている。年間70万人以上が訪れる気比神宮(敦賀市曙町)の門前にある神楽町1丁目商店街(59店)は、有志で「気比さん参道いきいき会議」を3月下旬に立ち上げた。空き店舗の解消やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での情報発信などに取り組む。

 設立会議では、気比神宮や敦賀駅から歩いて楽しめる仕掛けづくりや各店の仕事や魅力に触れる子ども向けの体験型イベントの開催などのアイデアも出た。同会議会長の谷口正宏さん(59)は「新幹線開業と、さらにその先に向かって前向きに取り組んでいきたい」と話す。

 同会議のアドバイザーで、4月から市の第三セクター「港都(みなと)つるが」でタウンマネジャーを務める阿部俊二さんは京都や名古屋に近い敦賀に交流拠点としての発展の可能性をみる。

 「まちづくりはみんなが主役の、ゴールのない取り組み。まず、やる気のある人が、やれることからやっていくことが大事だ」

 新幹線開業とその後を見据えたまちづくり。21日に投開票される敦賀市長選での論戦のテーマの一つだ。(福宮智代、八百板一平)