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【アピタル+】患者を生きる・食べる「武田双雲と胆石」(胆石防ぐ注意点)

 書道家の武田双雲さんも患った胆のう炎や胆管炎。その原因の多くが、胆のうで作られる胆石です。胆石ができるのを防ぐには、どんな注意をすればよいでしょうか。最新の診療ガイドラインをまとめた責任者の高田忠敬・帝京大名誉教授に聞きました。

――胆のうとはどのような臓器ですか?

 胆のうは胆汁を一時的に貯蔵しておく場所です。私たちが食べたものは、胃で消化され、腸から吸収されて、肝臓に送られます。肝臓では体に必要な栄養をつくったり、有毒物質を分解したりするほか、脂肪の消化を助ける胆汁という消化液をつくります。この胆汁が胆管というパイプを通って胆のうにためられます。

 胆のうは1リットル程度の容量があります。脂っこい食事などをすると収縮し、十二指腸へ胆汁を送り出します。こうして体はバランスよく動いているのです。

――胆のう炎や胆管炎は、どんな病気でしょうか?

 肝臓の働きのひとつはコレステロールの排出です。コレステロールは胆汁に溶けて排出されますが、多すぎると結晶化してします。これが胆石です。

 胆石の多くは胆のうで生じます。胆石があるからといって、必ずしも病気になるわけではありませんが、胆のうの出口をふさいだり細菌に感染したりすると炎症を起こします。これが胆のう炎です。また、胆管に流れ出て詰まるなどすると胆管炎になります。

 こうした病気を総称して、胆石症と呼びます。腹部の激しい痛みや、全身が黄色くなる黄疸(おうだん)という症状を伴うのが特徴です。

写真・図版

――胆管炎や胆のう炎は、危険な病気でしょうか?

 私が研究を始めた1960年代ごろは、重症化した胆管炎になった患者さんの30%以上が死亡していました。当時は肝臓の専門医でさえ、治療はできないと諦めるほどでした。急いで診療ガイドラインを作る必要があり、私が取り組みました。

 診断基準もなかったので、世界的な権威であったワシントン大学のスティーブン・ストラスバーグ教授とも相談しながら、専門家のコンセンサスを集めて基準づくりを始めました。東京で国際会議を開くなどして、診断基準と治療方法をまとめていきました。これが国際基準のガイドラインとなっています。

――患者の武田双雲さんのように激しい腹痛があっても、胆石症と診断するのは難しいのでしょうか?

 胆石を見落とすなんて、意外に感じるかも知れませんね。しかし、たとえば十二指腸潰瘍(かいよう)のような病気でも同じように激しい腹痛が起きます。医師はしっかり勉強して見識を蓄え、丁寧で適切な検査をする必要があります。

 患者さんには、経験の豊富な専門医がいて設備も整っている病院で、検査と治療を受けることをお勧めします。「高次施設」と呼ばれる病院です。

高カロリー、高コレステロール避けて

――胆石の予防には、やはり食事が大切ですか?

 高カロリーや高コレステロールの食事を避けることが、予防に有効です。脂っこい料理はほどほどにしましょう。肉やバター、生クリームなどは飽和脂肪酸が多く、胆石のリスクを高めます。逆に、コーヒーや大豆を使った食事は、胆石のリスクを下げます。胆のう炎や胆管炎を避けるには、胆のうに胆石ができないように食生活を改善するのが有効です。また、肥満は大敵です。

 アルコール分が強い酒もよくありません。飲み過ぎに注意しましょう。こうしたことは、疫学データによって明確に裏付けられています。結局のところ、健康の原則ははっきりしているのですね。バランスのとれた食事、適度な睡眠、そして体を動かして肥満を避けること。この三つです。

 実は戦前の日本では、胆のう炎の主な原因は回虫などの寄生虫でした。しかし現在では衛生環境が改善する一方、食生活が欧米化して、胆のう炎や胆管炎の原因も変わりました。病気は時代とともに変化するのです。

――油をまったく取らないのも不適切ですね。

 それも非常に危険です。食事はバランスこそが重要です。油は、種類にも気をつけましょう。脂肪酸が分解されるとコレステロールができます。コレステロールが多いほど胆石が生じやすいのです。飽和脂肪酸が多いバターやラードなどの動物性の油を減らし、オリーブ油などの植物油を選ぶのがよいでしょう。

胆のう摘出の効果

――患者の武田双雲さんは、胆のう摘出手術を勧められましたが、最初は戸惑いました。

 胆石が胆のうに残っているケースでは、胆のうを除去するほうがよいでしょう。患者さんが不安にならないように、医師は丁寧に説明すべきです。

 胆のうを取り除いても、それほど大きな問題はありません。脂質の消化に使われる胆汁は、肝臓でつくられます。胆のうはこの胆汁を貯蔵しているだけです。むしろ胆石を長く放置すると重症化し、命の危険になることもあります。胆のうが腫れて、ひどい時には破裂し、腹膜炎で死亡する恐れもあります。

 通常、胆のう炎になった場合は3~7日以内に手術をします。腹腔(ふくくう)鏡での摘出手術が体への負担が少ないのですが、重症の場合は開腹手術になります。胆のう炎が軽症で、意識障害や呼吸障害などがなければ、2~3カ月ほど後に手術することもできますが、これより遅くなると死亡率が急激に上昇します。医師とよく相談して、適切な治療をしてください。

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<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・伊藤隆太郎)