【動画】中心市街地は今 山口・周南市長選=三沢敦撮影
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 山口県周南市が約55億円を投じて整備したJR徳山駅ビル。図書館や書店、カフェを備えた複合施設の入館者は開館1年で200万人を超えた。「まちの顔」として存在感を増す一方で、既存の中心商店街の人通りは少ない。市長選の投開票が21日に迫る中、中心市街地を歩いた。

 オープンデッキに設けられた遊び場に子どもたちの歓声が響く。図書館入り口のスペースでは音楽イベントが開かれ、軽快なリズムが建物を包み込む。

 「ここに来れば、何かしら楽しいイベントがある」。週末にはたいてい訪れるという市内の女性(28)が魅力を語ってくれた。

 中心市街地再生の切り札として駅ビルが営業を始めたのは昨年2月から。レンタル大手「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営。おしゃれな内装に加え、コーヒーを手に読書が楽しめる居心地の良さが人気を呼び、年間の入館者は当初の目標を80万人も上回った。

 だが、にぎやかな駅ビルの目の前には、静寂に包まれた「別世界」が広がる。2013年に百貨店が閉店した「みなみ銀座商店街」は多くの店がシャッターを閉じ、まるで通路のようだ。

 駅ビルへの来場者を商店街にも呼び込もうと、中心部では多彩なイベントを展開してきたが、「徳山銀座商店街」で働く40代の男性は「そのときは人が集まっても、潮が引いたように元に戻る」と嘆く。

 毎回数千人の人出でにぎわうパンのマルシェイベントも、お目当てのパンを買い求めるだけで、周辺にお金はほとんど落ちないという。「これでは、よそから商売に来たパン屋のために場所を貸しているようなものだ」と肩を落とした。

 徳山銀座商店街の地下1階で「洋食の店 アラスカ」を夫と一緒に切り盛りする佐藤紀子さん(71)は、この街の半世紀を見つめてきた。高度経済成長時代、石油化学コンビナートを抱える徳山は人であふれ、通りは買い物客で肩がぶつかるほどだった。

 飲食店でひしめいていた地下1階は今、大半が店を閉じた。「駅ビルができても何一つ変わらない。どうしたらいいんですかね」

 人口が減っているうえ、人々の生活スタイルが変化したことも大きいと感じる。「商店街に行かなくても、通販で何でも手に入る。商店街の必要性が薄れてしまったのでは」と話す。

 駅周辺では3年後のオープンをめざし、商業施設やマンション、ホテルなどを一体化させた民間主導の再開発計画が本格化している。

 「大いに期待している」。そう話すのは、徳山銀座商店街で雑貨店「NOICHI」を経営する溝上重幸さん(52)だ。4年前に東京からUターンして開店して以来、個性的な贈答用グッズの品ぞろえで客層を広げてきた。

 だが、不安も少なくない。どこの中小都市にもある画一的な再開発なら、すぐに色あせてしまうだろうと思うからだ。

 「この街にしかないコンセプトがなければ、人はまた来なくなる。話題性のある施策が打ち出せるかは、やはり政治のリーダーシップにかかっている」(三沢敦)

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