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 児童の安全のために。小学校の校長先生のそんな思いやりが事件を生んだ――。

 福岡県中部の町。その小学校は少し高台にあった。入り口から近くを通る片側1車線の県道までは、約35メートルの坂道が結んでいた。

 坂道と県道の合流地点の先には、信号機のある丁字路交差点があった。横断歩道の手前には一本の白い停止線。信号待ちの車が増えると、車列はここから合流地点まで伸びることがあったという。町の教育委員会の説明だ。

 新しい「停止線」が突如、姿を現したのは昨年3月のことだった。場所は本来の停止線から約15メートル手前。信号待ちの先頭の車が合流地点にかからない位置だった。

 描いたのは小学校の50代の校長だった。スプレーで、「停止線」に似せた白線をひいた。昨年4月、110番通報で発覚した。校長は町教委に、「子どもたちが下ってくる際に、信号待ちの車にぶつかる可能性があり、危険だと思った」と理由を説明した。

 町教委の説明では、過去に校長とこの道が危険だと話題になったことがあったという。しかし、停止線に似せた白線を勝手に道路にひくことは、道路交通法で禁止されている。福岡県警は昨年7月、校長を道交法違反の疑いで書類送検。8月1日付で罰金4万円の略式命令を受けた。町教委は校長を口頭注意処分とした。

 校長がひいた「停止線」は、今は塗料で塗りつぶされている。本来の停止線の位置を移すことはできないのか。県警は「移動させると、学校から坂を下って左折した車が、そのまま赤信号の交差点に進入する恐れがある」と指摘する。

 町教委は、坂道を走って下らないよう児童への安全指導を進めるという。(木下広大、島崎周)