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 首長も議員もなり手不足が際立つ今回の統一地方選だが、定数を大幅に上回る候補者が名乗りを上げた地域もある。北海道帯広市(定数29)では13人多い42人が立ち、美瑛町(同14)では19人の候補者に70~80代の新顔が計3人。盛り上がりの背後に何があるのか。

 帯広市議選の候補者42人の内訳は、現職26人、元職2人、新顔14人。競争率は1・45倍と、今回の統一選のうち札幌市議選の一部の区を除く道内市議選で最激戦となっている。40人以上が立候補するのは、定数36に43人が立った1999年以来だ。

 議員報酬は2006年度に月額47万円に増やして以来、据え置いたまま。市選挙管理委員会は「候補者が増えた理由は分からない」と首をひねる。

 「政党関係者ら特別な人だけの政治でなく、一般人の代表として市政にかかわりたい」「行政のチェックマンとして市民生活を支えたい」など立候補の動機もさまざまだ。

 多くの人が立候補したことを、候補者自身もおおむね前向きにとらえる。ある新顔は「それだけ当選ラインが下がる。市民にとっても知り合いが出る確率が上がり、注目度が高まるのでは」。現職の一人も「うかうかしてはいられないが、有権者はそれだけ自分の考え方に近い議員を選ぶことができる」と話す。

 元議長で郷土史に詳しい嶺野侑(みねのすすむ)さん(87)は「帯広市議会は治安維持法が厳しかった戦前から、言うべきことは言う『うるさい議会』として定評があった。戦後もそれが受け継がれ、深夜まで紛糾することが絶えなかった。それがここ数年、静かな議会になっていたことへの反動ではないか」と指摘。「議員のなり手不足は、議会制民主主義の危機。これだけ多くの人が立候補した帯広市議会は未来に希望をつないだ」と受け止める。

 美瑛町議選では、現職9人に対し、新顔は1人多い10人が名乗りを上げた。現職は60代5人、70代3人、40代1人なのに対し、新顔は40代1人、50代4人、60代と70代が各2人、80代1人。町選管によると、定数20だった1991年に無投票となった以外、毎回選挙戦になっているという。

 町のある幹部は「5期20年務めた浜田哲町長の今期限りの勇退と関連があるのでは」と推測する。町は道内有数の観光地として知られるが、観光客の受け入れ態勢の整備などに課題も抱える。長く町政のかじ取りを担った浜田町長が去ることで、「町の将来を何とかしたいという方が手を挙げてくれたのではないか」とこの幹部は言う。

 留寿都村議選(定数9)には14人が立候補した。村議会は昨年1月、定数を10から8に減らす条例改正案を否決。住民有志が議会改革のため有権者の4割の署名を添え、村長に直接請求したのを受けて提案された議案だ。その後、定数は1減としたが、「直接請求で議会への関心が高まった」と村関係者はみる。

 有権者は約1500人。前回はトップ当選者が断トツの票を集め、最下位当選は2桁だった。「自分にもできそう、と立候補のハードルが下がった」(同じ村関係者)との声もある。

 13人が立った泊村議選(定数8)の候補者をみると、現職6人に対し新顔が7人で、うち2人は30代。現職2人の引退が多数の立候補を促した形だ。(中沢滋人、井上潜、今泉奏)

選択肢あること好ましい

 《山崎幹根(みきね)・北大公共政策大学院教授(地方自治論)》 人口減少などで元気がない自治体が多いなか、候補者が定数を大幅に超えている議員選があることは驚きだ。議員と住民との対話や情報公開などの改革が功を奏し、議会への関心を高め、候補者が増えているのではないか。憲法上、我々が持つ大事な権利である投票権を行使する上で、選択肢があることは好ましい。