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 在職中にうつ病を発症し、2015年に命を絶った北九州市の元非常勤職員(当時27)の両親が、公務災害(労災)の請求を不当に拒否されたとして、市に損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、福岡地裁であった。鈴木博裁判長は両親側の請求を棄却した。

 亡くなったのは、市内の区役所で働いていた森下佳奈さん。12年4月に採用され、子ども・家庭問題の相談員をしていたが、約9カ月後に心身の不調を訴え休職。うつ病と診断され、退職後の15年5月に自ら命を絶った。

 両親側は、佳奈さんが上司の激しい叱責(しっせき)を受け、新人には対処が難しい業務を任せられて精神的な負担が増した結果、うつ病になったと主張。佳奈さんが亡くなった後に労災請求の手続きを尋ねたが、市側は「市の条例では非常勤職員本人や遺族に請求は認められていない」と回答した。当時の条例や施行規則には、非常勤職員本人や家族からの労災請求に関する規定がない状態だった。

 この訴訟をきっかけに、総務省は昨年7月、全国の自治体に非常勤職員や遺族も労災請求できることを明示するよう通知。北九州市は昨年10月に制度改正したが、改正前の事案は請求を認めず、森下さんのケースは対象外になった。

 しかし、批判を受けて市は方針を転換。今年2月下旬、非常勤職員やその遺族が、過去にさかのぼって労災認定を請求できるように制度を再び改正した。

 問題を巡っては、遺族への補償を求める訴訟の審理が続いている。(一條優太)