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 18日午後11時45分ごろ、北海道夕張市高松の市石炭博物館から白煙が見えると職員から消防に通報があった。市消防本部によると、建物から地下に続く「模擬坑道」付近から出火したとみられる。消防は坑道に水を流し込み、水没させて消火を進めている。石炭層に燃え移った恐れがあり、消火には時間がかかりそうだ。けが人はいなかった。

 市などによると、模擬坑道(約186メートル、深さ約15~20メートル)は実際に使われていた坑道を改修した見学施設で、石炭採掘の巨大な機材などを展示。施設は冬季休業中で、27日の今季のオープンに向けた作業が行われていた。石炭の崩落を防ぐため、作業員5人が18日午後3時ごろまでの約1時間、鋼材を溶接するなどし壁を補強。午後4時半ごろに施錠し撤収したという。

 道警などによると、午後11時25分ごろに自動火災報知機が発報し、駆けつけた職員が模擬坑道の入り口付近から煙が出ているのを見つけた。消防は近くの川の水をポンプ車でくみ出して坑道に水を注入しており、札幌市や岩見沢市からも消防車両が出動した。

 博物館は1980年、「炭鉱から観光へ」のスローガンのもと開業。市の財政破綻(はたん)で多くの施設が閉鎖したが、石炭産業の歴史を伝える資料価値が高い施設として、市が5億円をかけて大規模改修し、昨年4月に改めてオープンした。

 昨年度の入場者数は、リニューアル以前の平均を1万人ほど上回る3万2千人。破綻から再生に向けて、にぎわいを取り戻す施設として期待されていた。

 消防は模擬坑道を水没させる方針で、大きな被害は避けられない。市教育委員会の担当者は「鎮火しても、膨大な量をどうやって坑道から排水すればいいのか。費用は計り知れない」と頭を抱える。

 市長職務代理者の斎藤幹夫理事は「オープン時期は申しあげられない。鎮火と原因解明が先だ。本館に被害はない。再生に向けて進んでいきたい」と話した。

 「素人目で見ても、ここまで燃えていたら復旧は無理だと思う」。19日午前、沼ノ沢地区に住む小川昭雄さん(72)は現場に駆けつけ、高く立ち上る煙を見て嘆いた。「3月でJR(石勝線夕張支線)が廃線になった。この博物館がなくなったら、夕張には何もなくなってしまうのでは」

 住民の女性(65)は、多くの死者を出した81年の北炭夕張新鉱事故を思い出す。「模擬坑道は世界的にも希少な遺産。早く鎮火してほしい。市民みんなが心配している」と話した。(平賀拓史、遠藤美波)