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 ミレニアル世代で同性愛、人口10万人の中西部の市長――。2020年の米大統領選に向けた民主党の候補者選びで、異色の候補が脚光を集めている。インディアナ州サウスベンドのピート・ブダジェッジ市長(37)。1カ月ほど前はほぼ無名だったが、瞬く間に主要候補の仲間入りを果たした。今一番勢いに乗っている候補だ。当選すれば史上最年少、初の同性愛者の米大統領となる同氏にチャンスはあるのだろうか。

 「難しい話を聞く前に、一番気になる問題がある」

 米ケーブルテレビCNNが3月10日にブダジェッジ氏を招いて開いた市民対話集会で、司会のジェイク・タッパー氏がこう切り出した。

 「あなたとあなたの夫の間には、名前をどう発音するか意見の相違があるようだ。夫は『buddha-judge(ブダ・ジャッジ)』、あなたは『BOOT-edge-edge(ブート・エッジ・エッジ)』と説明している。どう発音すればいい?」

 「どっちでもいけますよ。地元ではメイヤー・ピート(ピート市長)と呼ばれています」

 全米テレビ中継されたこの集会での実直でさわやかなやりとりと鋭いトランプ政権批判が高い評価を得て、ブダジェッジ氏は一躍名前が知られるようになっていく。だが、この時点では候補者乱立の民主党予備選で「その他大勢」の一人。米メディアでさえ、父が地中海の島国マルタからの移民で、米国でも珍しい名字を持つ若き市長の名前の読み方が分からなかったのだ。(朝日新聞では米国駐在の複数の特派員が市長本人の発音を繰り返して聞き、カタカナ表記を「ブダジェッジ」とすることに決めました)

ノーマークから3位人気に

 この日以来のブダジェッジ氏の勢いには目を見張るものがある。

 主要テレビ局のトーク番組にひっぱりだことなり、娯楽メディアにも登場。集会には想定を大きく上回る参加者が詰めかける。16日にアイオワ州デモインで開いた集会には、参加者50人を想定していたところ1600人が集まったという。

 昨秋の中間選挙での健闘で民主党の「新星」との期待を集め、大統領選に名乗りを上げたベト・オルーク前下院議員もかすむ勢いだ。当初は各種世論調査で支持率が0~1%と低迷していたが、エマーソン大学が11~14日に行った世論調査では、オルーク氏や有力候補と目される女性のカマラ・ハリス上院議員らを上回る9%に急上昇し、3位に食い込んだ。

 前回の予備選でヒラリー・クリントン氏と激戦を繰り広げたバーニー・サンダース上院議員(29%)、ジョー・バイデン前副大統領(24%)とはまだ差があるものの、大健闘と言える。

 米大統領選では資金力が大きくものを言うが、ブダジェッジ氏は第1四半期に700万ドル(約7億8千万円)の献金を集めた。サンダース氏の1820万ドル、ハリス氏の1200万ドル、オルーク氏の940万ドルに次ぐ額だ。ブダジェッジ氏は14日に地元サウスベンドで大統領選への立候補を正式表明したが、陣営によると表明後数時間でさらに100万ドルが集まった。

「珍しいタイプ」

 なぜ、大統領選の被選挙権(35歳以上)を得たばかりのこの若者がこれほどまでに人を引きつけるのか。

 ワシントン・ポスト紙の政治分析コラムは理由の一つに「民主党にしては珍しいタイプであること」と挙げる。

 民主党は東海岸と西海岸の大都市に支持者が多いが、ブダジェッジ氏は製造業の衰退で長く停滞していたサウスベンドで生まれ育ち、市長として街の再興に尽力したという「中西部要素」を備える。市長在任中に海軍予備役として招集され、アフガニスタンで7カ月従軍したという経験もあり、こうした点は「発展に取り残されてきた」との不満を抱える層や、地方に多い共和党支持者からも共感を得やすいポイントだ。

 名門ハーバード大卒、難関のローズ奨学生としてオックスフォード大で学んだトップエリートでもあり、高齢層にも安心感を与える一方で、若い世代を中心にリベラル色を強める民主党支持者にアピールできる条件もある。

 ミレニアル世代という若さと、同性愛者であるという点だ。

 「学校での乱射事件が当たり前になった世代で、米同時多発テロ以降、部隊に多くの人を送った世代に属している。一生にわたって気候変動の影響を受ける世代であり、根本的に変えない限り、親の世代よりも経済的に苦しいというこの国初の世代になってしまう」

 ブダジェッジ氏は14日の立候補演説でこう語り、「新しい時代の指導者が必要だ」と訴えた。若い世代に「自分たちと同じ目線で語れる政治家」を印象づける。

パートナーも人気

 自身が多様性の象徴でもある。リベラル派にとっては、LGBTQなど性的少数者の権利擁護や社会への包摂は重要なテーマの一つだ。

 ブダジェッジ氏が同性愛を公表したのは市長2期目を控えた15年。すでに30代で、比較的遅い公表だったが、18年にはデートアプリで知り合ったというチャスティン氏と結婚。演説でもチャスティン氏がしばしば話題に上る。

 「両親が闘病して大変だったとき、チャスティンも一緒にいてくれた。私の心の中だけでなく、病院や州、そして法律の立場から見ても、彼は法律にのっとって結婚した私の配偶者であり、家族の一員なのだ」

 ブダジェッジ氏の躍進とともにチャスティン氏もソーシャルメディア上での人気者に。14日の集会では演説を終えるとチャスティン氏が壇上に登場。大きな歓声の中、2人で手をつないで壇から降り、参加者と握手をして回った。

 5日にニューハンプシャー州であった対話集会に参加した同性愛者のフィリップ・グロスマンさんはこう期待する。

 「同性愛を公表した候補者がここまで受け入れられるのを初めて見た。メイヤー・ピートの活躍でLGBTの仲間から選挙に出る人が増え、政治の場で中心的な地位を占められるようになればよいと願っている」

 人柄も好感されている。集会の参加者らに話を聞くと、多くの人が支持理由に挙げるのが「誠実な人柄」だ。オルーク氏が場を盛り上げるのがうまい政治家なのに対し、ブダジェッジ氏はむしろ冷静に対話をし、相手を引き込んでいくタイプだ。

「死にゆく10都市」で

 立候補表明に立ち会おうと車で約2時間のシカゴから駆けつけたITコンサルタントのケイティー・マーティンさん(25)は「メイヤー・ピートは米国民をいろんな意味で体現していて、この国のさまざまな層の人たちの心に声を届けることができる」と語る。大学院進学のためにフロリダ州からサウスベンドに引っ越し、街が気に入ってとどまっているというケイト・ミシュリーさんは「市長選などを手伝って本人と会ったこともあるけど、本当に良い人。見たとおりの人」と話す。

 市長選の討論会の司会や地元テレビ局のインタビューで何度もブダジェッジ氏と向き合ったことがあるというインディアナ大学サウスベンド校のエリザベス・ベニオン教授は、29歳で市長に初当選したときの選挙と現状を重ね合わせる。

 「最初の市長選の予備選には地元で知られた政治家やビジネスマンが複数立候補していて、無名のブダジェッジ氏は本命候補ではなかった。だが、経歴を見て少し関心を持ち、彼の主張に耳を傾けてみるとたちまち感心させられる。彼には『もっと話を聞いてみたい』と思わせる力がある」

 ベニオン氏は「スタイルと中身」の両方でブダジェッジ氏が支持者を引きつけていると話す。

 サウスベンドは1963年に最…

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