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 高校野球の春季和歌山県大会が20日、上富田スポーツセンター野球場であり、今春の選抜で8強入りした智弁和歌山が2回戦から登場。和歌山南陵を3―0で下した。6安打と持ち味の強打は控えめだったが、もう一つ智弁が大事にする武器はしっかりと光らせた。

 二回の守備の前のことだ。ベンチから智弁の選手が飛び出していく。西川晋太郎(3年)は遊撃の定位置につくなり、片ひざをついて右の手のひらで丁寧に地面をならした。西川が言う。「ぼこぼこで(打球がイレギュラーに跳ねそうで)怖い部分を、できるだけいつも同じような状態にしておきたかった」

 遊撃だけではない。二塁手の黒川史陽(ふみや、3年)も一塁手の佐藤樹(たつき、3年)も、暇さえあればしゃがんで地面を平らにしていた。

 「守りのチーム」。甲子園歴代最多の春夏通算68勝を誇る高嶋仁・前監督が、強打の前から植え付けてきた智弁の信条だ。ノックの激しさだけで鍛えられたものではない。「普段の練習から土をならすのは、チームで徹底しているので」と主将の黒川。準備の段階から抜かりはない。

 3点リードの七回2死二塁で、一、二塁間に勢いよく打球が転がった。黒川が飛び込んで伸ばしたグラブに白球がおさまった。一塁へ送球し、アウトに。抜けていれば2点差。試合の流れが変わりそうな場面を救ったのも守備だった。無失策のまま、春の和歌山の初陣を飾った。

 「よく準備して、守ってくれていた」と中谷仁監督も納得の表情だった。夏に向けてテーマに掲げるのは、「バッテリーの充実」。この日は小林樹斗(たつと、2年)、池田陽佑(3年)の両右腕が無四球で零封リレーを見せた。ストライク先行の投球ができたのは、頼れるバックがいてこそ。「智弁は打つだけじゃない」と西川。真っ黒になった手のひらは、雄弁だった。(小俣勇貴