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【アピタル+】患者を生きる・食べる「痛風」

 痛風患者は100万人、尿酸値が高い「予備軍」は1千万人ともいわれています。暴飲暴食を避けて水分をしっかりとり、適度な運動をすることが大切です。実は「なりやすい体質」の人がいることもわかってきています。防衛医科大の松尾洋孝(まつおひろたか)准教授(分子生体制御学)は「きちんと治さずぶり返す人も多いが、正しい治療をすれば発作はなくなります」と指摘します。

――痛風とはどんな病気ですか。

 尿酸は、細胞の核に含まれる物質「プリン体」が分解されてできる代謝産物です。体内でつくられる量が排泄(はいせつ)量を上回ると、血液のなかで溶けきれなくなった尿酸が関節にたまっていきます。血液1デシリットルあたり7ミリグラムを超えると「尿酸値が高い」状態です。

 何らかのきっかけでそれがはがれると、体内で異物と見なされ、炎症が起きます。これが痛風の「発作」です。

――治療はどのようにしますか。

 「尿酸値をゆっくり下げる」ことが大切です。患者の多くは、長い時間をかけて関節に尿酸がたまっているので、急に下げたり過度な運動をしたりすると、痛みを伴う発作が再発しやすいからです。

尿酸値が上がらないようにするには、アルコールやプリン体の多い食品のとりすぎを避ける。水分を十分に摂取し、適度な運動をするとよい。

 痛風の発作と治療を家の屋根の上の積雪にたとえるとわかりやすいです。

 ・家の屋根に雪がたまりつつある状態(血液の尿酸値が高く、関節にたまる)

 ・雪がどさっと落ちる(痛風発作)

 ・さらにたまるか、急激に晴れると、また雪がどさっと落ちる(痛風発作の再発)

 治療は、まず鎮痛薬などで炎症を抑えます。そのうえで、積もった雪をじわじわ溶かして、雪がない状態にして落ちないようにする(発作の予防)ため、薬を使って尿酸値を下げます。患者には、尿酸を多く作りやすいタイプのために尿酸が体内にたまる人と、体外に排出が少ないタイプのために尿酸がたまる人がいます。どちらのタイプかを見極めて、どの薬を使うかを決めます。

尿酸値は必ずしも低ければいいというわけでもない。尿酸には老化などの原因となる活性酸素を除去する作用があるとされる。

 尿酸には活性酸素を除去する作用があります。このため、私は尿酸値を5.0~5.9ミリグラムの維持することを目安に治療しています。

――痛風になりやすいのはどのような人ですか。

 痛風は暴飲暴食や運動不足の人がなると思われてきましたが、遺伝子が大きく影響していることがわかってきました。私たちの研究で、痛風患者の多くは尿酸を外に運ぶ働きの遺伝子に変異があることがわかりました。また、小腸の働きが弱まると、排泄(はいせつ)できなくなって尿酸値が高くなることもわかりました。

 さらに、お酒に強い体質の人は痛風になりやすいこともわかりました。アルコールの分解過程で働く遺伝子「ALDH2」の働きがよい人はお酒が強いです。痛風患者1千人ほどを調べたところ、「ALDH2」の働きがよくお酒に強い人の痛風の発症リスクは、弱い人の2.27倍でした。ふだん飲酒が月に1回未満の人で調べても、お酒に強い人の発症リスクは1.93倍高かったです。お酒に強い人は、飲まなかったとしても発症リスクが高い。お酒だけではなく、痛風の原因となる肥満にも、より気をつけてほしいです。

――痛風になりやすいほかの要因はありますか。

 私たち防衛医大と、名古屋大、大阪大などの共同研究グループは、約12万2千人の日本人の遺伝子を調べ、新たに8個の尿酸に関わる遺伝子を見つけました。さらに、この結果と欧米の約11万人のゲノムも解析し、さらに15個の尿酸関連遺伝子を見つけました。その研究論文が4月に英国の科学雑誌に掲載されました。

 見つかった遺伝子は、細胞代謝や増殖、酸化ストレスや炎症に関連していました。高尿酸血症や痛風の解明や、新たな予防法・治療法につながると期待しています。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・食べる>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・水野梓