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 4年に一度の統一地方選が幕を閉じた。松川町では30代の町長が誕生し、リゾート開発に揺れる小谷村では、現職の手法に疑問を投げかけた新顔が当選するなど、「変革」を求める住民の姿勢も表れた。当選者に占める女性の割合は市議選、町村議選とも過去最高になった。

町政の閉塞感 得票へ

 長野県松川町長選で現職らを破って初当選し、県内最年少首長となった宮下智博氏(39)は22日午前、町内の事務所で報道各社の取材に応じた。21日夜に町役場で当選証書を受け取り、知人らから祝福のメールや電話も多く受けた。「責任や怖さも感じるが、首長の器と認めてもらえるよう期待に応えていきたい」と意気込みを語った。

 得票数は現職を約千票上回る4079票。「このままではいけないという漠然とした危機感、停滞感、閉塞(へいそく)感」が、自分の当選につながったと宮下氏は見る。

 町は様々な問題を抱える。リニア中央新幹線工事で出る残土の置き場を巡る地域のトラブル。太陽光発電施設の土地評価を巡る問題や、副町長となる町職員に退職金を割り増しした問題などを巡っては、町側の対応に疑問を持つ住民らが、住民訴訟を起こす事態にまで発展した。

 問題の累積は町職員の士気低下を招き、ひいては役場の「機能不全」につながった、と宮下氏は考えている。「子どもをUターンさせたいが、役場は勧められない」。そんな親の声も聞いた。「職員が笑顔で仕事ができる環境にしたい。一人ひとりとの面談も必要」と語った。

 一方で変革の柱と考えるのが、子育て世代を含む住民の町政への参加だ。町長選は無投票が3回続き選挙戦は16年ぶり。「誰がなっても変わらない」「誰かがやるもの」という意識から「自分たちの未来は自分たちがつくるという気概を持った町に」と訴え続けた。

 有力な支援者の1人は「上からではなく下からのまちづくり。新町長を中心にみんなで考えていく。そんな町の革命にもなりうる」と期待を寄せた。(松下和彦)

女性の割合 過去最高に

 21日に投開票された今回の統一地方選では、女性の健闘が目立った。当選者に占める女性の割合は、県内の市議選で23・7%、町村議選で16・8%となり、ともに過去最高を更新した。

 松本市議選(定数31)では立候補した女性12人中11人が当選。女性議員の割合が過去最高の35・5%に達した。諏訪市議選(定数15)では立候補した女性5人が全員当選し、初めて3割を超えた。7市議選全体では当選者131人のうち31人。過去の統一選の市議選で最も高かった2011年の17・5%を大きく上回った。

 町村議選では、定数8のうち女性3人が当選した大鹿村が37・5%。定数13に対し、4人が当選した下諏訪町では30・8%だった。女性「ゼロ」の議会だった川上村や南牧村には女性議員が誕生した。当選者298人中、女性は50人。15年の14・2%を上回った。

 候補者中の女性の割合も市議選は21・1%、町村議選では16・3%で、ともに過去最高を更新していた。

 今回の統一選は少ない女性議員を増やそうと昨年、候補者男女均等法ができて初の大型選挙。市町村議選では、無所属女性候補の健闘が目立った。法律も追い風になったとみられる。

 ただ同法は議員選の候補者数を男女均等にするよう政党に努力を求めている。市議選で11人中5人、町村議選で10人中6人の女性公認候補を出した公明党や、市町村議選の公認候補3人中2人が女性だった立憲民主党の姿勢は際立った。共産党も3割ほどが女性。一方、自民党や国民民主党などは、公認候補の擁立がなかった。(岡林佐和)

住民が争点化主導

 高級リゾート開発計画など観光振興策への評価が主要な争点となった長野県小谷村長選。計画を白紙に戻して検証すると訴え、当選した新顔の中村義明氏(57)は22日、取材に応じ、計画について「公正な検証が大事」と述べた。今後、公募を含む第三者委員会を設けて、6月末をめどに方向性を出す考えを示した。

 現職の引退という要素もあったが、無投票だった過去2回の町長選とは打って変わり、新顔3人の激しい選挙戦となった。背景となったのは、村の未来を左右する争点の存在だった。

 争点化を主導したのは住民だった。現職が進めた村出資の株式会社による観光開発事業を巡り、「再考」を求めるなどした数件の陳情や請願が村長や議会に出され、中には200人超が名を連ねたものも。3月には村支出分の返還を求める住民監査請求もなされた。

 これまで村側は、リスク面を含む開発計画の内容などをしっかり明示したとは言いがたいまま、億単位の公金を計画に投じようとしてきた。こうした運用に住民が疑問を持ち、異議を申し立てるのは民主主義のあり方として、真っ当なことだと言える。中村氏は告示前に計13回のミニ集会を開催。「村民の声が村政に通っていないと実感した」と話す。

 税金の使われ方や街の課題に関心を持ち、議論の俎上(そじょう)にあげる。それが活発な選挙戦につながり、より練られた考えや議論を経て首長が選ばれる。80%近い高い投票率は、今回のそんな好循環を物語っている。(北沢祐生)